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概要 |
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フランクリンミント製 1/24
自動車の歴史のなかで後世にその名を残しているスポーツカーのなかでも別格の存在はメルセデス ベンツ300SLでしょう。1954年に発表された300SLはスポーツカー レースを制するために開発された車で、実際にルマンに優勝した車を一般向けに市販したものです。したがって基本的にはレーシングカーそのものといった車で、現在でいうと2003年に5台だけ発売された「AMG CLK-GTRロードスター」(価格2億円)あたりが一番近い車で並みのスポーツカーとは別格であるといえるでしょう。
この車の別名は「ガルウイング」ですが、自動車に初めて使われたこの特別な機構のドアもこの車のボディ構造から必然的に生まれたものです。ボディは軽量化のため鋼管スペースフレーム構造(鋼管を鳥籠のように溶接で組上げた構造)となっています。ボディ外皮はその上にかぶせてあるだけです。したがってコクピット横のドアのスペースにも鋼管が通っており通常のドアが構成できないことからこのようなドアとなったわけです。 |
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エンジンも別格です。戦前のベンツはスーパーチャージャーでパワーを稼いでいましたが、このエンジンには燃料噴射が採用されています。しかも気筒内への直接噴射です。最近でこそこの技術は電子制御を用いて乗用車エンジンにも採用されるようになりましたが、ベンツは50年以上も前に機械式の燃料噴射装置でこれを達成しています。これは燃料噴射装置が必須のディーゼル エンジン乗用車を初めて実用化したベンツならではの技術です。この技術により6気筒SOHC 3Lエンジンからキャブレター方式の約1.5倍の215HPを引き出し最高速度250km/hを誇ります。
以下に300SLと関連する車のミニカーを紹介します。300SLのミニカーは非常にたくさんありますので、ここで紹介するのはそのほんの一部で私が所有しているものだけです。したがって「MINICHAMPSのあれがないじゃないか」等のつっこみはご勘弁ください。 |
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MERCEDES-BENZ 300SL PROTOTYPE プロトタイプ |
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300SLのSLはSuper Leichet(Super Light:超軽量)を意味します 。当時のベンツの高級車300のスポーツ仕様300Sのシャーシ、ボディを軽量化しエンジンをチューンして300SLのプロトタイプが作られました。この車はまず1952年のミッレ ミリアに出場しこのレースでは2位となり順調なスタートを切ります。その後もルマン24時間の優勝などいくつものレースで優勝しています。 | |
MAX M3310 Le Mans 1952年 1/43 MAXはミニチャンプス系列のブランドで、ルマン優勝車のミニカーです。ドアは既にガルウイング式となっていますがまだ全体的にもっさりとしたスタイルをしています。このプロトタイプはバン(BANG)、ミニチャンプスもミニカーにしています。 |
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ボンネットを革ベルトで固定しています 優勝した21号車となっています |
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MERCEDES-BENZ 300SL COUPE クーペ |
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プロトタイプの市販化に際して車両重量の増加は避けられず、性能維持のためにはエンジンのパワーアップが必要でその切り札として採用されたのが燃料噴射でした。気筒内への直接噴射はメインテナンスが厄介なのでこの技術は300SLとレーシングカーにしか採用されていません。ボディは風洞実験で決められたとのことで、当時として異例に低い車高(1300mm)で流線型の滑らかな曲線で構成されています。またこのボディは軽量化の為総アルミニウム製です。1954年のニューヨーク オートショーで披露された生産型300SLは大反響を引き起こします。
豪華なGTカーに仕上げられていますが、もちろんメーカーのもくろみどうりスポーツカー レース(GTクラス)で大活躍しています。300SLは1400台だけ生産されて1957年には生産中止となります。値段はベースになった高級車300Sよりも安かった!!ということで出血大サービスだったようです。(もちろん庶民には買えませんが) |
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FRANKLIN MINT 1/24 1989年に購入したフランクリンミント製 フランクリンミントのミニカーとしては初期のものになります。大スケールのミニカーなのでガルウイング式ドアの開閉機構やコクピット内部など素晴らしい出来です。シートは実車と同じ格子柄の布張りで、画像では分かり難いですがリアにはリアガラス下のスペースにすっぽり収まる300SL専用のスーツケースが載っています。 |
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この画像ではタイヤがやや大きめに感じます |
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エンジン部分は割とあっさりしています スペアタイヤに占領されたトランク |
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SCHUCO 2452 1/43 ドイツのシュコーはミニチャンプスに勝るとも劣らない精密な出来映えのミニカーを出しています。この300SLは1993年頃に発売されたもので、ガルウイング開閉をギミック化してあるうえにドアを開くと見えるコクピットもよく再現されいて1/43サイズでは最高レベルの出来と思います。 |
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バランスの良いサイドビュー |
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ワイパーはエッチング材 Aピラー下のアシストグリップも再現されています |
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BANG 7089 1/43 イタリアのバン製 上記のシュコーと同時期の1993年頃に発売 イタリアのミニカーはやや大げさにデフォルメされるものが多いですが、これもサイドビューを見るとフェンダーラインがよりダイナミックな感じになっています。これもガルウイング開閉のギミックがつけられていて室内は赤を基調とした派手な仕上げになっています。(実際に赤いレザーの内装の実車があります) |
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小さなフェンダーミラーがついています ダイナミックな感じのフェンダーライン |
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ウインカーに色が付いているのは北米仕様? 派手な赤のコクピットもよく似合います 排気管がでかすぎ |
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SOLIDO 4502 1/43 フランスのソリド製 1985年頃のソリドが廉価版のミニカーを作っていた時期の作品ですので本来のソリドらしいシャープさがなく今ひとつの出来です。ボンネットと右側のドアが開閉するギミックが付いています。 |
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このフェンダーミラーはない方がいい 底板が厚く全体にふっくらした感じ? |
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ドアは右側のみ開きますが、これ以上は開きません 簡単なエンジン部分 |
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DELPRADO カーコレクションシリーズ No20 1/43 デルプラド カーコレクションシリーズ 全体的なバランスはいいのですが、一番肝心のフロントのライトまわりの造形がよろしくありません。デルプラドには上質な出来のものもありますが、これはあまり評価できない類に入ります。 |
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ライトまわりの雰囲気がいまいち |
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RUBICON 4502 1/43 1977年に発売されたミニカーショップコジマのオリジナル ブランド「ルビコン」のミニカー ホワイトメタル製で重いです。当時としてはプロポーションを重視した意欲的なミニカーでした。コクピット全体が小さめになっているのが分かると思いますが、センスの良いデフォルメが効いた味のあるミニカーです。 |
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塗装だけですがフロントもそこそこのレベル 経年変化で塗装が荒れています |
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QUIRALU 9 1/43 フランスのキラルのビンテージもの オリジナルは1956年に作られていますがこれは1990年代に作られた復刻版です。昔のミニカーですのでかなり芸術的な?デフォルメがされています。最近のミニカーコレクターなら「似てないじゃん」とおっしゃるかもしれませんが、これはビンテージミニカーでスケールモデルではありません。写実的な模倣レベルを越えて実車の迫力が感じられると思いませんか? |
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芸術的な?デフォルメがされてます |
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MERCEDES-BENZ 300SL ROADSTER ロードスター |
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オープンの300SLを望むアメリカ市場からの要望に応えて1957年に発表されたのが、300SLロードスターです。ロードスターにはガルウイング式のドアがつけられないので通常のドアとするためスペースフレーム構造が変更されボディはスチール製に変わっています。スチールボディの採用で重量は増加しましたが公称性能は300SLと同じです。さらに後輪のサスペンションが変更され限界走行時の挙動変化が穏やかになりこの変更でリアにトランクスペースが出来ています。(シートの後ろに幌を収納するので室内に荷物スペースがなく必要だったのです) ヘッドライトが丸形の前期型と、縦長の後期型があります。価格は同じようなオープンカーの約5倍で1963年まで販売され販売台数は約2000台でした。 | |
MINICHAMPS 400-039030 1/43 2006年に発売されたミニチャンプスのロードスター ミニチャンプス最盛期のそつのない出来で実車のイメージをよく再現してあります。 |
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バランスの良いサイドビュー |
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前期型のライトを忠実に再現 このサイドのスリット部分は見せ所 |
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TEKNO 807 1/43 デンマークのテクノのミニカー 1970年頃に購入したもので、45年以上も前に発売されたものですが全体的な雰囲気などビンテージミニカーとして最高の出来です。バンパーやグリルが金属製のがっちりした作りで現在のミニカーが得意とする細かなパーツなどは付いていませんが、最近のミニカーにはあまり感じられない存在感があります。ボンネットとトランクが開閉するギミックがついています。 |
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ドライバーが付いているのは楽しい やや長めの寸法にデフォルメされています |
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トランクにはスペアタイヤ ボンネット内には メタル製のエンジンも付いています |
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CORGI 96416 1/43 老舗コーギーには型番303で300SLロードスターがありますが残念ながら持ってません。こちらは1993年に発売された新生コーギーのものです。出来としては全体的に丸みをおびていてコーギーらしいともいえますがいまひとつといったところです。 |
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以上300SLについてまとめてみましたが、300SLと同時期に設計され大活躍したレースカーとしてW196、300SLRがあります。これらの車と当時のベンツのレース活動についても簡単にまとめてみましたので興味のあるかたは以下も見てください。 | |
MERCEDES-BENZ W196 |
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第二次大戦の敗戦から立ち直ったベンツはグランプリカーレース復帰を検討します。1954年から始まった2.5Lの新レギュレーションに参入すべく新規に開発されたレースカーがW196です。W196は現在のようなミドシップ エンジンによるレースカーが一般的になる以前のフロント エンジンのレースカー世代最後の究極的な車です。ボディはモノコックではなく300SLと同様の鋼管スペースフレーム構造で、ブレーキはまだドラム式です。
エンジンは直列8気筒2.5Lですが、デスモドロミックバルブ開閉機構(バルブを閉じるのにスプリングを使わずカムで閉じる)と機械式直接燃料噴射という極めて精緻なメカを採用し256HP(後に280HP)という圧倒的なパワーを得ています。ちなみに当時のライバルであったフェラーリ(4気筒2.5L)は230~250HPの性能でした。W196は大成功でした。1954年の初戦のフランスGPで優勝しその後もドイツ、スイス、イタリアGPで3連勝しています。つづく1955年もほとんどのレースで優勝し圧倒的な強さでした。 |
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BRUMM R280 FRANCE GP 1954年 1/43 古いレースカーをたくさんモデル化しているブルムのミニカー これはファンジオがドライブして初戦で優勝したカーナンバー18 この当時のレースカーは車輪をカバーしたこのような流線型ボディも高速サーキットではありでした。この流線型タイプはストリームライン タイプ、又はこのGPの開催地に因んで「ランス」タイプと呼ばれています。 |
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リアフェンダー前端のインテークはリアタイヤ冷却用 |
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サイドから出た排気管 |
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BRUMM AS14 MONZA GP 1955年 1/43 上記と同じミニカーをジオラマ仕立てにした物 イタリアGP(モンザ サーキット)で優勝した車でドライバーはこの年ワールドチャンピオンとなったファンジオ このレースでは500kmを平均時速206.79km/hで走っています。 |
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当時のドライバーはこんな軽装でした ノーズには泥はねの汚し塗装がされてます |
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BRUMM S006 1954年 1/43 同じくブルム こちらはオープン ホイールのW196でドイツGPから登場しました このタイプはオープンホイール タイプ、又は開催地に因んで「ニュルブルクリング」タイプと呼ばれています。このレースでもファンジオが優勝していますが、カーナンバー19はクリングがドライブして4位となった車です。 |
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サイドには大きな開口部があります (中のエンジンは手抜きで付いてません) タイヤのロゴは「DUNLOP」 |
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向かって左にあるインテークはエンジン吸気用 今と違ってタイヤの幅がずいぶん細いです |
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MERCEDES-BENZ 300SLR |
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300SLRはこのW196の2シータ版でスポーツカー レース用として開発されたものです。2シータですのでシャーシやボディはW196より大きくなっています。エンジンは3Lに拡大され耐久性を考慮してややデチューンされていましたがそれでも300HPで最高速度は300km/hを越えていました。300SLRの初戦は1955年のミッレ ミリアで1、2フィニッシュをしています。その後もW196同様圧倒的な強さでしたが、その年のルマン24時間で起こったレース史上最悪の事故でベンツはレース活動から撤退してしまいます。
事故の概要はこんな具合です。時間は午後6時半頃でまだライトが必要ない時間帯です。グランドスタンド手前でトップのジャガーDタイプ(ドライバーはマイク ホーソン)に2台の300SLR(ドライバーはルヴェーとファンジオ)が迫っていました。3台とも最初のピットインの時期で、ジャガーがピット手前で前方の周回遅れのオースチン ヒーレーを左から追い抜くと同時に急減速して右のピットに入ろうとしました。(そもそもこの行動が事故の発端) 前方をふさがれたオースチン ヒーレーは左に回避しようとしますが、そこにはルヴェーの300SLRが迫っており300SLRの右ノーズがヒーレーの左テールに乗り上げます。300SLRはヒーレーを踏み台にして舞い上がりスタンド側壁に衝突し炎上 エンジンなどがバラバラになりスタンド(客席)に落下しました。
この結果 ルヴェーと観客など80人以上が死亡しました。(観客の大半は焼死) レースの主催者はレースを続行し、事故の連絡を受けたベンツ本社では重役会が開かれその結果翌日になって1、3位を走っていた車をピットに戻しレースを棄権しました。結局レースはマイク ホーソンのジャガーDタイプが優勝しました。事故の加害者はベンツだと考えられた為ベンツは撤退が遅いことを非難されました。事故調査委員会は事情聴取の結果ベンツに責任がないと判断しましたがベンツは道義的な責任をとって全てのレースから完全に撤退することを決定しました。事故はこのようなものだったそうですが、現在のようにTV録画などはありませんから本当はどうだったのかははっきりしません。なおその後長い空白期間を経て1989年のルマンに復帰したベンツはそのレースで1、2フィニッシュしています。 (ベンツは本当にとんでもなくすごい会社です) |
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BRUMM R190 Mille Miglia 1955年 1/43 ブルムのミニカー 初戦のミッレ ミリアで優勝したカーナンバー722 ドライバーはスターリング モス、コドライバーはジャーナリストのデニス ジェンキンソンでした。ミッレ ミリアではナビゲータが同乗出来るので完全な二人乗り用のボディになっています。 |
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イギリス国旗が付いているのは ドライバーが英国人のモスだったから 2つの「こぶ」がややユーモラスな感じです |
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MINICHAMPS Le Mans 1955年 1/24 1993年に発売されたPMA(現ミニチャンプス)製の大スケールもの モデルとなっているのは歴史的な事故が起こったルマンに出場したファンジオの車で、事故の直前まで3位を走っていて事故現場を奇跡的にすり抜けています。非常に精密な出来で特にエンジンルーム内の造形は見応えがあります。なお無敵の300SLRにも弱点がありました。それは旧式のドラムブレーキでブレーキ頻度の高いルマンではディスクブレーキを装備するジャガーが有利でした。そこでルマン仕様の300SLRにはエアブレーキなるものが装備されていました。コクピット後ろにあるフラップが油圧で立ち上がるもので高速からの減速には極めて有効だったそうです。(エアブレーキは画像をクリックすると動作します) |
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画像をクリックするとエアブレーキが動作します 画像をクリックするとドアが動作します |
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トランクの上につき出ているのは ガソリンタンクの注ぎ口 |
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300SLと同じ布張りのシートがついています
スポークホイールも本格的 |
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BRUMM R188 Le Mans 1955年 1/43 ブルムのミニカー 上記と同じファンジオのカーナンバー19 1/43サイズなので上記と見比べると見劣りがしてしまいますがこれはこれでそこそこ良くできています。事故死したルヴェーのカーナンバー20のモデルもあります。 |
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ノーズの位置が高いのがいまいち エアの排気口がモールドだけなのもいまいち |
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BRUMM R187 COUPE 1955年 1/43 同じくブルム この車は開発用に2台作られたクーペで300SLと300SLRのあいのこのような車です。300SLを開発したルドルフ ウーレンハウトがパーソナルカーとして使っていたそうです。レーシングカーそのものですがレースには出ていません。 |
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ノーズの位置が高いのは上記に同じ ガルウイング式のドアです |
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ベンツ 300SLのミニカーは上記以外にもたくさんあります。当サイトのミニカーデーターベースを検索すれば、現在モデル化されているミニカーのほとんどを一覧できます。右のリンクをクリックしてください。 データーベースでベンツ 300SL/SLRのミニカーを検索 データーベースでベンツ W196のミニカーを検索 | |
以上 ベンツ300SL関係のミニカーの紹介でした。 2006/08 作成 2015/08 モバイル対応用にページ構成変更並びに内容更新 | |