Sorry Japanese Only
シトロエン B2 キャディ フランス 1923年
シトロエン社初期のシトロエン B2にはたくさんのボディバリエーションがありました。その中で一番毛色の変わったモデルが、B2 キャディでした。B2 キャディはスポーティなボートテール型ボディを持つ、2座オープンカー(補助席付で3人乗り)で、見た目は当時の軽快なスポーツカーのようでした。標準のエンジン(20HP)を22HPに軽くチューンしてあり、最高速はセダンの70㎞/hに対して90㎞/hと高性能になっていました。さらにエンジンをパワーアップした仕様もあったそうです。
ただしB2は基本的には実用車で、このようなスポーティな仕様のモデルはシトロエンのユーザー層には必要とされませんでした。その為、生産されたのはごく少数だったとのことです。B2 キャディはスポーティなパーソナルカーの先駆者のような車でしたが、この車でシトロエンにスポーティなイメージを植え付けるのは無理でした。その後1930年代にシトロエン ロザリーが速度記録に挑戦したことがありましたが、基本的に戦前のシトロエンにはスポーティなイメージはありませんでした。
ミニカーは2019年に発売されたノレブ製です。最近のノレブはフランス車を中心にして堅実なミニカー開発を行っていて、ダイキャスト製で一級品の良い出来ばえです。このシトロエン B2 キャディも特徴的なボートテール型ボディがうまく再現され、細かい金具類やインパネのメーター類もリアルで、ノレブらしい良い出来ばえです。なおB2 キャディの量産ミニカーはこれが初めてでしたので、同時期に発売された同じノレブ製のモデル Aともども、うれしいモデル化でした。シトロエンのファンでクラシックカーが好きな私はなんの迷いもなく即購入してしまいました。(ただしシトロエンでも高価なレジン製であれば買いませんが) 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
このページではなくこの記事へのリンクURLは以下となります
https://minicarmuseum.com/historic/his_link.php?id=1974
シェナール & ウォルカー ルマン フランス 1923年
フランスのシェナール & ウォルカー社は鉄道技術者のE.シェナールと鉱山技術者のH.ウォーカーが共同で1901年に設立した自動車会社でした。最初の自動車は2気筒1.2Lエンジンを搭載した小型車で、その後4気筒3Lエンジン搭載の14/16HPや6気筒4.5Lエンジン搭載のタイプUなどが追加されました。第1次大戦中は軍用車を生産し、1920年代にはフランス第4位のメーカーとなりました。しかし上位メーカーとの競争に敗れ1936年に破産し、車体メーカーの傘下となりました。第2次大戦後数年間はプジョー傘下で商用車を生産しました。
シェナール & ウォルカーは1923年の第1回ルマンで優勝したことで、自動車の歴史にその名前を残しています。最初のルマンに参加したのはほとんどがフランス車(ドラージュやブガッティなど)で、フランスの国内レースといった趣でした。シェナール & ウォルカーは平均速度92㎞/hで優勝、2位と7位も同車でした。優勝車は高性能なSOHCエンジンを搭載しサーボ付フロントブレーキを備える当時最先端の高性能車でした。なおイギリスから唯一参加したベントレー 3L(1924年第2回ルマンで優勝) が4位となっています。
ミニカーはルマン優勝車をモデル化しているイクソ製のルマン24シリーズの1台で、2006年に発売されました。1923年ルマン優勝車をモデル化しています。このルマン24シリーズに共通する良い出来ばえで、当時の実車に即したフェンダー上の補助灯などルマン仕様の細部が良く再現されています。これ以外のシェナール & ウォルカー ルマン優勝車のミニカーはスパーク(レジン製)があります。ルマン優勝車以外のシェナール & ウォルカーのミニカーとしては、ノレブの戦後の商用車、フランスのミニカー付雑誌「Voitures fran?aises」のNo.28にTANK Y8という名前の1927年式スポーツカーがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
このページではなくこの記事へのリンクURLは以下となります
https://minicarmuseum.com/historic/his_link.php?id=1820
ブガッティ T32 タンク プロトタイプ フランス 1923年
ブガッティ T32 タンクは1923年のフランス GPに参戦するために開発されたレースカーでした。タンク(水槽)という名前は、この独特のボディ形状から名付けられました。空気抵抗を低減するために側面が飛行機の翼断面の形状をしています。この形状はエットール ブガッティのアイデアだったそうです。彼はブガッティ T35のような官能的なデザインだけでなく、正面から見ると正方形に見えるこのようなスクエアなデザインも好みだったようです。ただこの形状だと高速では揚力が働くので、高速走行時の路面のグリップは良くなかったようです。
T32は8気筒2L(90HP)エンジンを搭載し、最高速は180km/hの性能でした。1923年のフランス GPではT32が4台参戦し、ゼッケン#6が3位となりました。(残り3台はリタイヤ) T32の後継車は1924年に登場し圧倒的な強さを誇ったT35でした。 なおブガッティ T57のレース仕様として1936年に登場したT57Gもタンクと呼ばれました。T57G タンクも基本は四角いボックスデザインでしたが、全体的に流線的なデザイン処理がされていました。T57Gは1937年のルマンで優勝しています。
ミニカーは2010年に発売されたブルム製です。T32 タンクのプロタイプをモデル化しています。角ばったボディとリベット止めされた外板がうまく再現されていて、実車の雰囲気が良く再現されています。コクピット内の造形など細かいところも結構忠実にモデル化しています。ブルムはレース仕様(型番R467)と黄色のストリートカー仕様(型番R468)もモデル化しています。T32 タンクは最近までミニカーがありませんでした。2009年にトップモデル(レジン製)が初めて(たぶん)モデル化し、2010年にブルムがブガッティ創立100周年記念モデルとしてモデル化しました。トップモデルのT32 タンクはボディ外板のスリット部に墨入れしてありますが、実車のボディ外板は割とあっさりしていてスリットもあまり目立たないので、ブルムの表現のほうが実車に即しているように思います。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
このページではなくこの記事へのリンクURLは以下となります
https://minicarmuseum.com/historic/his_link.php?id=2048
フィアット 519S リムジン イタリア 1923年
前述した520 スーパーフィアットの失敗で、ロールス ロイスのような超高級車市場にはフィアットが進出する余地がないと判断したフィアットは、1922年に520の普及版の519をフィアットの最上級車として登場させました。全長は約5mでスーパーフィアットのホイールベース(3860㎜)を3600㎜に短くした新しいフレームに6気筒4.8L(77HP)エンジンを搭載し、4段変速で最高速116km/hの性能でした。520と同じ全輪油圧サーボブレーキを採用していました。
519には初期型の519とホイールベースの短い(3300㎜)高性能版の519Sがありました。519Sは同じエンジンでしたが、軽量ゆえに最高速は126km/hに向上していました。外観も519Sのラジエータグリルは中央が突き出したV字型でスポーティでした。ボディ形式は4ドアセダン、リムジン、トルペード(カブリオレ)などが架装されました。1927年まで生産され、後継車の525に変わりました。519の総生産台数は約2400台でした。
ミニカーは1970年代に発売されたリオ製です。ラジエータグリルがV字型になっている519Sのリムジーンをモデル化しています。なおこの519Sは前述した520の型をそのまま流用しているので、ホイールベースが520のままとなっています。したがって519Sの1/43のミニカーとしてはかなり全長が大きすぎることになります。(1/43サイズでは103㎜ほどになるはず) 全長以外の見た目は520と519はほとんど同じように見えますので、520の型を流用してコストダウンしたのだと思いますが、これはクラシックカー専門メーカーとしては好ましくないやり方でした。(ただ当時そこまで細かいことを知っていて気にするマニアは、私も含めてほとんどいなかったと思いますが) ただしボンネットを外すと見えるエンジンは6気筒エンジンになっていますので、サイズ以外はきちんとモデル化しています。バリエーションでトルペードもありました。また2003年にイタリア国王のフィギュアを付けたリムジン、2014年には霊柩車も発売しています。リオ以外の519のミニカーはドゥグー製のトルペードがありました。 以下はフロント/ボンネットを外したエンジンルームの画像とリアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
このページではなくこの記事へのリンクURLは以下となります
https://minicarmuseum.com/historic/his_link.php?id=176
フィアット エルドリッジ メフィストフェレ イタリア 1923年
イギリスのドライバー アーネスト エルドリッジ(Ernest Eldridge)がフィアット初期のレーシングカー(フィアット SB4 1908年式)を買い取り、フィアットの航空機用エンジン(6気筒 21.7L 320HP)を搭載してモンスターマシーンに仕立て上げたのがこのメフィストフェレ(MEFISTOFELES メフィストフェレスともいう)でした。メフィストフェレとはゲーテの戯曲(小説)ファウストに出てくる悪魔の名前ですが、この車の凄まじいエンジン音が地獄の騒音を思わせたそうで、「悪魔からエンジンを買った」というような意味のあだ名だそうです。
この車は走行させるとタイヤのトレッドが剥がれてバーストしたり、ドライバーが制御不可能なスリップを起こすなど、その名前の通りのとんでもない代物でした。1924年にフランスのアルパジョンで公道での世界速度記録 236.98km/hを達成しています。その後この車は売却されあちこちを転々としたあと、1960年代にトリノのフィアット博物館(旧 ビスカレッティ自動車博物館)が購入してリストアされました。
ミニカーは1978年に発売されたブルム製です。ブルム初期の傑作品で、実車の雰囲気がうまく再願されています。前後サスペンションの造形など細部までリアルに再現されていて素晴らしい出来ばえです。このミニカーにはお手本となったミニカーがありました。それは1975年頃に発売されたドゥグー製のエルドリッジ メフィストフェレで、フィアット博物館でレストアされた実車を忠実にモデル化していました。以下にドゥグー製のメフィストフェレの画像も載せました。同じ車のモデル化とはいえ非常によく似ているので、ブルムがお手本にしたという私の推定はたぶん間違いないでしょう。この2台以外のメフィストフェレの量産ミニカーは無いようです。なおブルム製の色違い(黒)がイタリアのミニカー付雑誌「100 Anni di Italia in Automobile」の購入者用ギフトとして使われたようです。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)