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フィアット 12HP イタリア 1902年
前述したフィアット 8HPに続いて10HPが1901年に登場しました。10HPは6HPの改良版で、6HPと同じエンジンをリアに搭載する構造でしたが、前後2列の4人乗り座席を持つフェートン形式のボディを架装していました。(参照画像→フィアット 10HP 1901年) 6HPと同じ直列2気筒1082cc(10HP)エンジンを搭載していたので、ボディが大きくなった分重量が増して性能的にはいまひとつだったようで、数台しか製作されませんでした。
10HPと8HPの後継車として12HPが1901年に登場しました。12HPはフィアット初の4気筒エンジンを搭載した中型車でした。4気筒3770cc(14HP)エンジンをフロントに搭載し、3段変速機を介して後輪をチェーン駆動する構造でした。きちんとしたフロントグリルが付いたボンネットを持つ4人乗りフェートンボディは、見た目が8HPよりも自動車らしくなり、最高速度も70㎞/hと高性能になっていました。12HPは約100台が生産されました。なおこの12HPをベースにしてレース仕様の12HP コルサが開発されました。(参照画像→フィアット 12HP コルサ) この車は軽量で競争力があったので、当時のレースを席巻していたフランスのパナールと互角に戦えたそうです。
ミニカーは1970年代に発売されたイタリアのリオ(RIO)製です。フィアット初期の車のミニカーは自国の車ゆえにリオがたくさんモデル化しています。リオのクラシックカーはマニア向けで灯火類、操作レバー、フェンダーなどの細かいパーツから、シャーシやサスペンションなどのメカ部分までリアルに再現されていました。この12HPもフロントグリル、灯火類、操作レバーとハンドル横のクラクション、床下のサスペンションや後輪駆動チェーンなどがリアルに再現されていて、かなり良い出来ばえです。茶のボディに青のシートのカラーリングもいかにもそれらしく感じがします。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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フィアット 16/24HP イタリア 1903年
前述したフィアット 12HPの後継車として1903年に16/20HPが登場しました。16/20HPは4気筒4179cc(20HP)エンジンを搭載する全長3.3mほどの中型車でした。フィアット初の4段変速機を備え、後輪をチェーン駆動して最高速度は70km/hでした。1904年にはホイールベースを延長してボディを大きくした16/24HPが登場しました。エンジン排気量は16/20HPと同じでしたが、24HPにパワーアップしていました。1905年にはホイールベースをさらに延長してボディを大きくした16/20HPが登場しました。1906年には16/20HPに新型の4気筒4503㏄エンジンが搭載されました。16/20HPと16/24HPは1906年まで生産され、総生産台数は約700台でした。
クラシックカーではこの16/24HPのような名前の表記が良く使われます。この「A」/「B」HP(フランスではHPではなくCV)という表記の意味は最初の「A」が公称課税馬力を示し、後の「B」が実馬力を示しています。公称課税馬力とは自動車に課せられる税金を決める為の排気量の区分を示すもので、気筒数や排気量に応じて計算式によって決まります。(日本の5ナンバーの小型乗用車と3ナンバーの普通車という区分と同じようなものです) この計算式は国や時代によって違っていますので、その詳細までは分かりません。
ミニカーは1970年代に発売されたイタリアのリオ(RIO)製です。リオのクラシックカーはマニア向けで、灯火類、操作レバー、フェンダーなどの細かいパーツから、シャーシやサスペンションなどのメカ部分までリアルに再現されていました。この16/24HPはイタリアの自動車博物館に保管されていた実車を忠実にモデル化していて、フロントグリル、灯火類、床下の後輪駆動チェーンなどの細部がリアルに再現されかなり良い出来ばえです。さらに幌の前端をフェンダーに固定しているベルトは実車に即して本物の革で作られています。このミニカーは1970年代に購入したのですが、当時は本物の革を手作業で加工して製作していたのです。たださすがに1980年代以降に製作された物はプラスチック製になってしまいました。(本物の革ですので保管に注意しないと腐る可能性があります) ボディ後部に黒い扉のような部分がありますが、これは後席に載る為のドアで、ドアの下に足を掛けるステップが付いています。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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フィアット 75HP コルサ イタリア 1904年
自動車創世期にはレースに参加することで技術が蓄積され、また勝つことが車の宣伝として有効でした。その為フィアットは設立当初からフィアット 6HPや12HPのコルサ(CORSA:伊語でレースの意)でレースに積極的に参加していました。1902年にレースカー仕様車フィアット 24HP コルサが登場しました。この車は量産車から派生したのではなく、レース用に特別に設計された最初の車でした。当時一般的であった木製シャーシではなくスチール製シャーシを採用し、4気筒6.4L(40HP)エンジンを搭載し最高速95㎞/hの性能で、国内では強かったようです。(実車画像→ フィアット 24HP コルサ 1902 )
初期の国際レースの勝者は当時の自動車先進国のフランス車(パナールやプジョーなど)に独占されていました。そのなかでフィアットが初めて国際レースで優勝したのは1904年のイタリアのコッパ フローリオで、このときに使われたマシンは4気筒10.6L(75HP)エンジンを搭載したフィアット 75HPでした。
当時のレースで勝つには強力なエンジンを搭載することが一番重要であり、1905年には4気筒16.3L(100HP)エンジンを搭載したフィアット 100HPが登場しました。この車はその年のフランスのモン ヴァントゥー ヒルクライムレースで優勝し、1906年のフランス GPで2位、1907年のフランスGPでは130HPにパワーアップしたフィアット F2が優勝するなど大活躍しました。なおこのような剥き出しのシートに座り時速100㎞/h以上で未舗装道路を走行したドライバーは命がけの仕事だったはずです。
ミニカーは1978年に発売されたブルム製です。ブルム初期の型番R050ぐらいまでのミニカーは、それまであまりモデル化されていなかった自動車創世期のレースカーを多くモデル化していました。(参照ページ→ ブルムのミニカー一覧 1) これもその1台で、1904年のコッパ フローリオで優勝した75HPをモデル化しています。実車をかなり忠実にモデル化していて当時のミニカーとしてはかなり良い出来ばえでした。床下部分のエンジン/変速機や後輪のチェーン駆動部もよく再現されています。75HPのミニカーはこのブルム製しかありません。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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フィアット 24HP リムジン イタリア 1905年
1905年当時のフィアットの上級車としては24/32HPと60HPがありました。24/32HPは前述した16/24HPの上級車で、1903年に登場しました。60HPは当時の最上級車で1904年に登場しました。24/32HPは当初4気筒6371㏄(32HP)エンジンを搭載していましたが、その後排気量を6902㏄、7363㏄に拡大していきました。ホイールベースはショート、ミディアム、ロングの3タイプがあり、全長は約4m-4.4mでした。車重は約1.7tで4段変速機を介して後輪をチェーン駆動し、最高速75km/hの性能でした。
また24/32HPはフィアットとして初めてランドレー形式(幌付の密閉式客室)のボディを採用したそうです。当時の自動車メーカーはシャーシしか製作しておらず、ボディを架装するのは馬車時代からの伝統があるカロッツェリアの仕事でした。したがってこの時代はユーザーが自分好みのボディを個別に注文できたので、16/24HPで初めてランドレー形式のボディを採用したといってもフィアットの標準ボディだったわけではありません。24/32HPは1905年まで生産され、総生産台数は約400台でした。
ミニカーは1970年代に発売されたイタリアのリオ製です。リオのクラシックカーはマニア向けで灯火類、操作レバー、フェンダーなどの細かいパーツから、シャーシやサスペンションなどのメカ部分までリアルに再現されていました。これは24/32HPに半密閉型のリムジンタイプのボディを架装した車をモデル化しています。フィアットのロゴが付いたフロントグリル、ガラスの付いたウィンドーシールド、灯火類などの細部がリアルに再現されていてとても良い出来ばえです。ステアリングホイールの造形で、ホーン操作部とスカットル右横に付いたクラクション本体とを接続する管をコイルスプリングで表現しているのは面白いやり方です。床下部分ではサスペンション/ドライブシャフト/後輪駆動チェーンがリアルに再現されています。実際にこのようなカラーリングの車があったかどうかは?ですが、緑と赤のカラーリングが綺麗です。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分/後輪チェーン駆動部の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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フィアット 60HP イタリア 1905年
フィアット 24HPの解説に記載したように、1905年当時のフィアットの上級車としては24/32HPと60HPがありました。1904年に登場した60HPは当時のフィアットで一番大きく豪華な車でした。当時の同クラスのライバルは4気筒9.2L(60HP)エンジンを搭載するメルセデス 60HPで、それに対抗してフィアット 60HPは4気筒10.6L(60HP)エンジンを搭載していました。その後1907年にフィアット初の6気筒エンジン11L(65HP)を搭載する50/60HPが登場し、1908年には6気筒7.4L(50HP)エンジンを搭載する35/45HPが登場しました。
60HPはそのほとんどがアメリカ市場に輸出され、潤滑油給油装置など先進技術を装備したこの類の高級車は富裕層に人気がありました。ホイールベースは長短2タイプがあり、アメリカのコーチビルダーが豪華なボディを架装していました。1903年のフィアット車の総生産台数は130台ほどで、その頃にアメリカ市場への輸出が始まり生産台数は増えていきました。60HPは1906年までの2年間で約80台ほどが生産されたそうですので、当時のアメリカ市場はフィアットにとって重要な市場だったはずです。
ミニカーは1970年代に発売されたイタリアのリオ製です。リオのクラシックカーはマニア向けで、灯火類、操作レバー、フェンダーなどの細かいパーツから、シャーシやサスペンションなどのメカ部分までリアルに再現されています。この60HPも3列シートに大きな幌がついた当時のフィアット最大の高級車を忠実に再現しています。底板部分にはエンジン/変速機と後輪のチェーン駆動部が再現されています。なお幌前端部を引っ張ってフェンダー部に固定している革紐は本物の皮革です。ミニカーの箱に添付されているリオの解説書ではこの車はフィアット初の6気筒7.4Lエンジンを搭載した60HPとしていますが、正しくは4気筒エンジン搭載の60HP(1905年式)だと考えます。バリエーションで幌を畳んだタイプもありました。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分/後輪のチェーン駆動部の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)