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ランチア ディラムダ イタリア 1929年
前述したランチア ラムダの成功で1929年にはアメリカ市場を指向した高級車としてディラムダが登場しました。ラムダの特徴であった前輪独立懸架サスペンションは踏襲していましたが、大型の豪華なボディを架装する為に従来のフレーム構造を採用していました。その為ラムダの斬新で軽快なデザインに比べると、ディラムダは古典的な高級車のデザインとなっていました。またエンジンもラムダと同じ狭角V型でしたが、アメリカ市場の嗜好に合わせてV型8気筒4L(100HP)エンジンが搭載され、4段変速で最高速125km/hの性能でした。
このディラムダという名前はエンジン気筒数などがラムダの2倍という意味で付けられた名前でした。当初はロングホイールベース(3475mm)仕様のみでしたが、1930年にショートホイールベース(3290mm)仕様が追加され、当時のカロッツェリアがセダンやトルペードの特注ボディを架装しました。1935年に生産中止となり総生産台数は約1600台でした。当時の保守的な高級車市場においてディラムダは先進的で個性的な車でしたが、高額であったことと1929年の世界大恐慌による不景気もあって商業的には失敗作となりました。
ミニカーは1978年に発売されたリオ製です。リオはクラシックカーを専門とするマニア向けのブランドで、当時のミニカーとしてはレベルの高い出来ばえでした。(その分値段も高かったですが) このディラムダも実車の雰囲気が良く再現されていて、フロントグリル/灯火類、室内などの細部もリアルに出来ています。特にこの車のヘッドライトは単純な円形ではなくランチアのエンブレムの形状になっているのですが、それがきちんと再現されています。(参照画像→ ランチア エンブレム) 立付けが良くスムーズに動作する前ドア開閉ギミック付です。リオはバリエーションでオープン仕様のトルペードと戦前の政治家ムッソリーニのフィギュアが付いたセダンもモデル化しています。これ以外のディラムダのミニカーはノレブがありました。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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ロールス ロイス ファントム I キャブリオレ ドヴィル イギリス 1929年
ロールス ロイスは1907年からシルバー ゴーストだけを作り続け、1925年までに6000台以上を販売し、その高い信頼性で「The Best Car of the World」の名声を確立しました。そのシルバー ゴーストもさすがに性能的に時代遅れになり、1925年に後継車として登場したのがファントムでした。(なお1929年にファントム IIが登場してからはファントム Iと呼ばれるようになりましたが、これは公式の名前ではありません)
ミニカーはクラシックカーの大スケール(1/24)ミニカーで定評があったフランクリンミント製のファントム Iで、1989年に発売されました。客室部分が幌で覆われたカブリオレ形式となっています。ロールス ロイス社の公式認可モデルでしたので、細かいところまでリアルに再現されています。ドアやボンネットなどが開閉可能でエンジンが再現されていることなどはフランクリンミント製では当たり前ですが、フロントウインンドーを跳上げることができることや有名なマスコット(フライング レディ)部分が銀メッキ処理されているなど凝った仕上げとなっていて、公式認可モデルと謳っているだけのことはあります。またステアリングホイールと連動して前輪が操舵できるギミックも付いています。ただ質感が良く表現された幌を開閉することまでは出来ません。(この類の幌が開閉できるギミックが付いている量産ミニカーは私の知る限りではありませんが)
フロントグリル上部のロールス ロイスの赤いロゴも良く出来ています。現在のロールス ロイスのロゴは黒ですが、これは1933年に創立者の一人であったヘンリー ロイスが死去した際に、喪に服する意味でロゴが黒になったとのことです。なおもう一人の創立者のチャールズ ロールズは1910年に飛行機操縦中の事故で亡くなりました。 以下はフロント(マスコット拡大 前輪操舵ギミック動作)/リアの拡大画像です。マスコットは黒ずんだ色になっていますが、これは本物の銀が錆びた状態(硫化銀)になっているからです。プラスチックの蒸着メッキではこのようにはなりません。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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ギャレット 蒸気ワゴン イギリス 1929年
ギャレット社(RICHARD GARRETT&SONS LTD)は1778年に設立された農業機械、蒸気機関の製造メーカーで1932年まで存続しました。同社は農業機械の製作から始め、蒸気エンジン、蒸気トラクター、蒸気トラック、電動トロリーバス、ディーゼルエンジントラックなどを製造しました。当サイトではエドワード期のギャレット社の4CD 蒸気トラクターのミニカーを紹介していますが、これはその約10年後の同じギャレット社の蒸気ワゴン(積載量約6tのボックストラック)です。蒸気エンジンはバルブなどが改良されてスムーズでパワフルになったそうです。
蒸気ワゴンの形式には、オーバータイプとアンダータイプの2タイプがありました。これはアンダータイプの蒸気ワゴンで、シャシー下に蒸気エンジンを配置し後輪をチェーン駆動していました。後輪にはゴムタイヤを使っていますが、空気が入っていないソリッドゴムタイヤでした。蒸気を発生させるボイラーがユニークな形状をした運転席内に配置されています。ボイラーが露出していないので、同時期のオーバータイプのフォーデン 蒸気ワゴンよりも自動車らしく見えます。ただ1930年代になるとより効率的で強力なディーゼル エンジンが使われるようになり蒸気トラックは姿を消していきました。
ミニカーは1985年に発売されたマッチボックス製のYシリーズです。荷台に表示された「CHUBB'S SAFE DEPOSIT」とは現存するイギリスの金庫メーカ「CHUBB」の貴重品保管庫という意味で、その会社のサービスカーをモデル化しているようです。これと同じボックストラックの実車画像は見つかりませんでしたが、同じモデルのダンプトラックの画像と見比べると、実車の雰囲気をうまく再現していると思います。また床下の蒸気エンジン/変速機やチェーン駆動の構造も結構リアルに再現されています。マッチボックスはバリエーションで平荷台トラックもモデル化していました。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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ソニークロフト トラック イギリス 1929年
ソニークロフト社はトラック/バスを製造していたイギリスの自動車メーカーでした。1896年にイギリス海軍技師のジョン アイザック ソニークロフト (John Isaac Thornycroft)がソニークロフト蒸気運搬車/バン会社「Thornycroft Steam Carriage and Van Company」を設立し、最初は蒸気トラック/バンを製造しました。同社は1902年にガソリンエンジンを搭載した自動車を製造し、1905年には4気筒ガソリンエンジンを搭載したバスを製造し、蒸気機関車から内燃機関車へ移行しました。第1次大戦では同社製のトラック(タイプ J)が5000台使われ、戦後は民間用として活用されました。
1948年に造船業のソニークロフト社との混同を避けるために、会社名がトランスポート エクイップメント (ソニークロフト)「 Transport Equipment (Thornycroft) Limited」に変更されました。その当時はガソリン/ディーゼルエンジンを搭載したトラック/バスや消防車用シャーシを製造していました。1961年にソニークロフト社はACV(Associated Commercial Vehicles)社に買収され、そのACV社は1962年にレイランド社に買収されソニークロフトの工場は1977年に生産を終えました。
ミニカーは1985年頃に発売されたコーギー製です。ミニカーの箱には年式が1929年と記載されているので、1924年に登場したタイプ A1/A2のトラックをモデル化しているようです。(実車の諸元はタイプ A1/A2という前提で書いています) 実車の写真を見ると、ロゴの付いたフロントグリルやウィンドースクリーンのないオープンの運転席のなどビンテージ時代のソニークロフト トラックがうまく再現されています。荷台に「East Anglian Fruit Company」と書かれているので果樹園で使われていたトラックなのでしょう。コーギーは同時期のソニークロフトの商用バンや2階建てバスもモデル化しています。これ以外のソニークロフトのミニカーは、コーギーの1940年代のトラック、オックスフォードの1970年代の消防車などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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コード L29 カブリオレ アメリカ 1929年
インディアナ州オーバンの馬車製造会社が1900年にオーバーン自動車を設立し自動車製造を始めました。同社は地元の自動車メーカーを買収するなどして1910年代には6気筒エンジン搭載車を販売しており、ある程度成功していました。しかし第一次大戦の物資不足の影響で工場が閉鎖されました。この会社の再建を托されたのが自動車ディーラーの優秀な販売員だったエレット ローバン コード(Errett Lobban Cord)でした。彼は在庫を一掃するなどして再建に成功し1926年に経営権を得ました。彼はその後の3年間でオーバン、コード、デューセンバーグの3つの自動車メーカーと航空機会社などを傘下に持つ一大企業連合体「コード帝国」を作り上げました。(並みの人物ではないすごい人だったようです)
彼は自身の名前を冠したコード社を1929年に設立し、最初の車としてコード L29を発表しました。L29は量産車としてはアメリカ初の前輪駆動車で、ライカミング社製直列8気筒4.9L(125HP)エンジンを搭載していました。L29は前輪駆動方式だけではなくボディデザインも斬新でしたが、これは「変わった車は売れる車」という持論を持つコード氏の意向だったようです。L29はセダン、フェートン、カブリオレ(クーペ)があり当時の同クラスの高級車と同等レベルの販売価格だったそうです。ただしエンジンのパワー不足で性能が芳しくなく、1929年に始まった世界恐慌のせいもあってあまり売れませんでした。1932年までに約4400台が生産されました。1935年にはコード車では一番有名な810/812が登場しました。
ミニカーは1979年に発売されたソリド製です。L29の2ドアカブリオレ(クーペ)をモデル化しています。1970年代のソリドのクラシックカーはシャープな造形で当時一級品の出来ばえでした。このL29もドライブシャフトがない前輪駆動の為全体的に低い車体や独特の形状のバンパーなど実車の雰囲気がうまく再現され良く出来ていました。ソリドは型番55でセダンもモデル化しています。これ以外のコード L29のミニカーはフランクリン ミントの1/43、ダンバリー ミントの1/16、マトリックス(レジン製)などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)