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ギャレット 4CD ショーマンズ 蒸気トラクター ’ジョージ卿’ イギリス 1918年
1800年頃に実用化された蒸気機関は工場の動力用途だけではなく、農業においても脱穀や収穫物を運ぶために馬のかわりとして使われました。このような物を運搬する車は蒸気トラクターと呼ばれ、作業場所へ荷物を運搬し作業場所で発電機としても使われました。このギャレット製の蒸気車はその代表的な蒸気トラクターです。なおショーマン(SHOWMAN)とは興行師のことで、移動遊園地などを行う興行師がこの蒸気トラクターを使って回転木馬などの大型遊技施設を運んでいたとのことです。
ギャレット社(RICHARD GARRETT&SONS LTD)は1778年に設立された農業機械、蒸気機関の製造メーカーで1932年まで存続しました。同社は農業機械の製作から始め、蒸気エンジン、蒸気トラクター、蒸気トラック、電動トロリーバス、ディーゼルエンジントラックなどを製造しました。4CD 蒸気トラクターは1907年からの21年間で514台が製造された同社で最も成功した蒸気トラクターでした。画像のミニカーの実車はイギリスの愛好者が保存している「ジョージ卿(LORD GEORG)」というニックネームが付いた車で、1918年に軍需用に製作されたそうです。その後1921年にショーマンに売却されて使用された後に放置され、1950年代にレストアされたもののようです。ショーマンが使っていたトラクターでしたので、明るい色のカラーリングで塗装され、装飾された屋根を支える支柱は真鍮製のパーツが使われていました。
ミニカーは2005年頃に入手したコーギー製です。実在する蒸気トラクター「ジョージ卿」を忠実にモデル化しています。実車の雰囲気を再現する為に、真鍮製金具はプラスチック製パーツで再現していますがそれ以外は金属製パーツを使い、金属の質感が感じられる造形になっています。(金属でできているものをプラスチックで再現すると見た目は似ていても質感が違うのです) 前輪を操舵する為に使うと思われる床下の金属製チェーンやベルト駆動される発電機のプーリー/ベルトなどの細部がリアルに再現されていて、実によく出来ています。屋根の上に付いている黒い筒は停止中にエンジンを作動させる際に使用する延長煙突で、これを使って煙突を高くして煙突から出る煙が近くの人の迷惑にならないようにするものです。屋根に「GALLOPERS ON TOUR」「NEW DODGEMS ON TOUR」と表示されていますがGALLOPERSとは回転木馬、DODGEMSとはバンパーカー(遊園地によくあるぶつけて遊ぶカート)のことなので、この蒸気トラクターも移動遊園地の遊技施設の運搬に使われていたのでしょう。コーギーは同じような蒸気トラクターを20種類以上発売しています。同じようなミニカーはマッチボックスのYシリーズの1/68、オックスフォードの1/76などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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アトキンソン モデル D 蒸気ワゴン イギリス 1918年
蒸気ワゴンは蒸気エンジンで走行する荷物運搬用のトラックで、20世紀初頭に登場した最も初期のトラックでした。蒸気ワゴンは主にイギリスで使われ、イギリス以外の製造メーカーはほとんどなかったそうです。蒸気ワゴンの形式には、オーバータイプとアンダータイプの2タイプがありました。これは蒸気エンジンをシャーシの上に配置するか下に配置するかの違いです。オーバータイプは蒸気エンジンと横型蒸気ボイラーをシャーシの上に配置するので、蒸気機関車のような外観になりました。アンダータイプは縦型ボイラーの下に蒸気エンジンが配置されていました。
アトキンソン社は1907年創業の商用車メーカーで創業当時は蒸気ワゴンの製造メーカーで、1970年頃に同業の商用車メーカーに買収されました。この蒸気ワゴンはアンダータイプで、運転席の真ん中にあるのが蒸気を発生させる縦型ボイラーで煙突が付いています。その蒸気で動作する蒸気エンジンは床下に配置されています。トラックの積載量は4tぐらいで、ミニカーの箱に書かれた説明によれば蒸気エンジンは2気筒で出力は70HP(300rpm)、最大積載時の最高速は12mph(約20km/h)だったとのことです。なおトルクは十分だったので変速機はほとんど必要なかったそうですが、2段変速機が付いたモデルもあったそうです。
ミニカーは1985年に発売されたマッチボックス製のYシリーズです。アトキンソンの平ボディトラックを縮尺1/60でモデル化しています。荷台に表示された「BLUE CIRCLE PORTLAND CEMENT」とは実在したセメント会社です。運転席を巨大な縦型ボイラーが占拠していて、2気筒の蒸気エンジンはボディ床下中央にあり、そこから後輪(タイヤではなく鉄輪の付いたホイール)をチェーンで駆動する構造となっていました。運転席は冬は暖房?が効いたでしょうが、夏はさぞかし暑かったことでしょう。ミニカーは縦型ボイラーや床下の2気筒蒸気エンジンがリアルに再現されていて良く出来ています。Yシリーズにはバリエーションでアトキンソンの蒸気トラックが5種類ほどありました。蒸気ワゴン以外のアトキンソンの商用車はコーギーやオックスフォードがモデル化しています。 以下はフロント(室内)/リアの拡大画像と俯瞰/床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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クロスレイ デリバリー トラック ’BEER LORRY’ イギリス 1918年
イギリスのマンチェスターでクロスレイ兄弟が1867年に設立したクロスレイ ブラザーズ社はポンプや小型蒸気エンジンを製造していました。同社は1880年から内燃エンジンのライセンス製造を始め、1903年から自動車の生産を開始しました。1906年に車両製造部門としてクロスレイ自動車(CROSSLEY MOTOTS Ltd)が設立され、1910年から独立した会社になりました。1909年に登場した4気筒エンジンを搭載したクロスレイ 20HP(1912年から20/25HP)はイギリス軍の軍用車として採用され、ほとんどが軍用車(スタッフカー、軽トラック、救急車)として第1次大戦中に使われました。(民生用の乗用車もありましたが) 同社は第1次大戦後の1920年代にはバス製造に主軸を移しました。
第2次大戦中は再び軍用車製造に専念することになりました。第2次大戦後の1945年にバス製造を再開しましたが、バス以外の車両は製造しませんでした。同社は単独での存続が出来ないと判断し、1940年代後半に同業のバス製造メーカー AEC(Associated Equipment Company)による買収に同意しました。クロスレイの工場での生産は1958年に終了しました。なおクロスリー ブラザーズ社は大型エンジンを製造するプレミア ガス社を買収して1935年にクロスレイ プレミア エンジン社に改名するなどして、現在はロールスロイス パワー エンジニアリング グループの一員となっています。
ミニカーは1984年頃に発売されたマッチボックス製です。上述したクロスレイ 20/25HPのトラックをモデル化しています。マッチボックスのクラシックカーのミニカー Yシリーズ(YESTERYEAR SERIES 型番Y**)は、他のメーカーがモデル化していないユニークな車種を安価でモデル化していて、これもその1台でした。マッチボックス流のコストダウンでフロントグリル枠とヘッドライトを一体成型してあるなど細部が簡素化されていますが、実車の雰囲気はうまく再現されています。また運転席周りもそこそこ良く再現してあります。荷台に積んでいるのはドイツのビール レーベンブロイ(LOWENBRAU)の樽ですが、レーベンブロイのロゴ(獅子)が綺麗に印刷されています。マッチボックスは同じ型で数種類のバリエーションを発売しています。それ以外のクロスレイの量産ミニカーはコーギーの2階建てバス 1/76などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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