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ド ディオン ブートン ビクトリア 蒸気車 フランス 1894年
蒸気機関に興味があったフランスの貴族ジュール-アルバート ド ディオン(Jules-Albert de Dion)伯は技術者のジョルジョ ブートン(Georges Bouton)とチャールズ トルパルドゥ(Charles Trepardoux)の協力を得てド ディオン ブートン社を1883年に設立しました。この会社は蒸気機関搭載の蒸気自動車を製造しました。同社は1894年に開催された世界初の自動車レース「パリ-ルーアン」に参戦しました。このレースでド ディオン ブートンの蒸気車は最初にゴールしたのですが、ドライバー以外に釜炊き要員が必要であった点などが審議された結果、2位になりました。全行程126㎞を平均速度19km/hで完走したそうです。このレースで優勝したのは少し遅れて2番目にゴールしたダイムラー製のガソリンエンジンを搭載したプジョーでした。
ド ディオン ブートン社はその後も1904年まで蒸気バス/トラックを製造していました。同社はガソリンエンジンの将来性に注目し、1895年には単気筒137ccの小型ガソリンエンジンを開発しそのエンジンを改良して搭載した3輪車(単気筒185㏄)を1897年に発売しました。(実車画像→ ド ディオン ブートン 3輪車 1899) さらに単気筒402㏄エンジンを搭載した4輪車も1899年に発売しました。このエンジンは当時として極めて高性能であった為、当時の自動車メーカーに広く使われることになり、ド ディオン ブートン社は1900年頃にはヨーロッパ最大の自動車メーカーになっていました。
ミニカーはクラシックカーのミニカーを主力にしていたイタリアのリオ(RIO)製で1972年に発売されました。パリ-ルーアン レースで2位となったビクトリア 蒸気車をモデル化しています。ボイラーと蒸気機関を搭載したトラクターが人力車のような客室部分を牽引する構造となっています。トラクターは蒸気機関で後輪をベルト駆動し前輪で操舵します。このミニカーは実車をかなり忠実に再現してありとても良く出来ています。また変わった構造をしていますので見ていてとても楽しく興味深いミニカーです。ミニカーに乗せているフィギュアは実によく似合っていますが、このフィギュアは別のミニカー(コーギー製のディムラー 38HP 1910)の物で、このミニカーの付属品ではありません。リオは2013年頃にこれとほぼ同じものを型番4374で発売しています。(たぶん国内では未発売) 以下はトラクターとトラクター床下の画像と客室部分の拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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ギャレット 4CD ショーマンズ 蒸気トラクター ’ジョージ卿’ イギリス 1918年
1800年頃に実用化された蒸気機関は工場の動力用途だけではなく、農業においても脱穀や収穫物を運ぶために馬のかわりとして使われました。このような物を運搬する車は蒸気トラクターと呼ばれ、作業場所へ荷物を運搬し作業場所で発電機としても使われました。このギャレット製の蒸気車はその代表的な蒸気トラクターです。なおショーマン(SHOWMAN)とは興行師のことで、移動遊園地などを行う興行師がこの蒸気トラクターを使って回転木馬などの大型遊技施設を運んでいたとのことです。
ギャレット社(RICHARD GARRETT&SONS LTD)は1778年に設立された農業機械、蒸気機関の製造メーカーで1932年まで存続しました。同社は農業機械の製作から始め、蒸気エンジン、蒸気トラクター、蒸気トラック、電動トロリーバス、ディーゼルエンジントラックなどを製造しました。4CD 蒸気トラクターは1907年からの21年間で514台が製造された同社で最も成功した蒸気トラクターでした。画像のミニカーの実車はイギリスの愛好者が保存している「ジョージ卿(LORD GEORG)」というニックネームが付いた車で、1918年に軍需用に製作されたそうです。その後1921年にショーマンに売却されて使用された後に放置され、1950年代にレストアされたもののようです。ショーマンが使っていたトラクターでしたので、明るい色のカラーリングで塗装され、装飾された屋根を支える支柱は真鍮製のパーツが使われていました。
ミニカーは2005年頃に入手したコーギー製です。実在する蒸気トラクター「ジョージ卿」を忠実にモデル化しています。実車の雰囲気を再現する為に、真鍮製金具はプラスチック製パーツで再現していますがそれ以外は金属製パーツを使い、金属の質感が感じられる造形になっています。(金属でできているものをプラスチックで再現すると見た目は似ていても質感が違うのです) 前輪を操舵する為に使うと思われる床下の金属製チェーンやベルト駆動される発電機のプーリー/ベルトなどの細部がリアルに再現されていて、実によく出来ています。屋根の上に付いている黒い筒は停止中にエンジンを作動させる際に使用する延長煙突で、これを使って煙突を高くして煙突から出る煙が近くの人の迷惑にならないようにするものです。屋根に「GALLOPERS ON TOUR」「NEW DODGEMS ON TOUR」と表示されていますがGALLOPERSとは回転木馬、DODGEMSとはバンパーカー(遊園地によくあるぶつけて遊ぶカート)のことなので、この蒸気トラクターも移動遊園地の遊技施設の運搬に使われていたのでしょう。コーギーは同じような蒸気トラクターを20種類以上発売しています。同じようなミニカーはマッチボックスのYシリーズの1/68、オックスフォードの1/76などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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アトキンソン モデル D 蒸気ワゴン イギリス 1918年
蒸気ワゴンは蒸気エンジンで走行する荷物運搬用のトラックで、20世紀初頭に登場した最も初期のトラックでした。蒸気ワゴンは主にイギリスで使われ、イギリス以外の製造メーカーはほとんどなかったそうです。蒸気ワゴンの形式には、オーバータイプとアンダータイプの2タイプがありました。これは蒸気エンジンをシャーシの上に配置するか下に配置するかの違いです。オーバータイプは蒸気エンジンと横型蒸気ボイラーをシャーシの上に配置するので、蒸気機関車のような外観になりました。アンダータイプは縦型ボイラーの下に蒸気エンジンが配置されていました。
アトキンソン社は1907年創業の商用車メーカーで創業当時は蒸気ワゴンの製造メーカーで、1970年頃に同業の商用車メーカーに買収されました。この蒸気ワゴンはアンダータイプで、運転席の真ん中にあるのが蒸気を発生させる縦型ボイラーで煙突が付いています。その蒸気で動作する蒸気エンジンは床下に配置されています。トラックの積載量は4tぐらいで、ミニカーの箱に書かれた説明によれば蒸気エンジンは2気筒で出力は70HP(300rpm)、最大積載時の最高速は12mph(約20km/h)だったとのことです。なおトルクは十分だったので変速機はほとんど必要なかったそうですが、2段変速機が付いたモデルもあったそうです。
ミニカーは1985年に発売されたマッチボックス製のYシリーズです。アトキンソンの平ボディトラックを縮尺1/60でモデル化しています。荷台に表示された「BLUE CIRCLE PORTLAND CEMENT」とは実在したセメント会社です。運転席を巨大な縦型ボイラーが占拠していて、2気筒の蒸気エンジンはボディ床下中央にあり、そこから後輪(タイヤではなく鉄輪の付いたホイール)をチェーンで駆動する構造となっていました。運転席は冬は暖房?が効いたでしょうが、夏はさぞかし暑かったことでしょう。ミニカーは縦型ボイラーや床下の2気筒蒸気エンジンがリアルに再現されていて良く出来ています。Yシリーズにはバリエーションでアトキンソンの蒸気トラックが5種類ほどありました。蒸気ワゴン以外のアトキンソンの商用車はコーギーやオックスフォードがモデル化しています。 以下はフロント(室内)/リアの拡大画像と俯瞰/床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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フォーデン C タイプ 蒸気ワゴン イギリス 1922年
フォーデン トラック社は1887年に設立されたトラック/バス製造会社でした。1890年頃から蒸気ワゴンの製造を始め、1930年代まで製造しました。フォーデンの蒸気ワゴンは当時最も人気があったそうです。フォーデン社は蒸気エンジンをディーゼルエンジンに転換し2006年まで存続しました。アトキンソン 蒸気ワゴンの説明で蒸気ワゴンにはオーバータイプとアンダータイプの2タイプあることを説明しましたが、このフォーデン C タイプの蒸気ワゴンは蒸気エンジンをシャーシの上に配置するオーバータイプの蒸気ワゴンで、オーバータイプとしてはその最終的なモデルでした。
フロントに蒸気を発生させる煙突の付いた黒い筒型の横型ボイラーがあり、その上に蒸気エンジンが配置されていました。蒸気エンジンの出力は23HP(450rpm)で、後輪をチェーン駆動していました。最高速は25km/hぐらいで、特別な変速ギヤ設定がされたモデルでは42km/hが可能でした。蒸気エンジンはトルクが大きいので、蒸気ワゴンは変速機をもたないモデルが多く、面倒な変速機操作が必要ないので運転が簡単で大型トラックとして1920年代まで使われていたようです。
ミニカーは1984年に発売されたマッチボックス製のYシリーズです。フォーデン C タイプ 蒸気ワゴンの平ボディトラックをモデル化しています。荷台の幌に表示された「PICKFORDS」とは現存するイギリスの引越しサービス会社です。煙突が付いたフロント部分の造形は蒸気機関車にそっくりで、道路を走る蒸気機関車といった感じのトラックです。運転席にある金色のはずみ車が付いた黒い箱の部分が蒸気エンジンで、そこから長いチェーンで後輪を駆動する構造になっていました。これ以外のフォーデン 蒸気ワゴンのミニカーはマッチボックスのバリエーションが数種類とコーギーのデイズゴーン シリーズ 1/76などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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ギャレット 蒸気ワゴン イギリス 1929年
ギャレット社(RICHARD GARRETT&SONS LTD)は1778年に設立された農業機械、蒸気機関の製造メーカーで1932年まで存続しました。同社は農業機械の製作から始め、蒸気エンジン、蒸気トラクター、蒸気トラック、電動トロリーバス、ディーゼルエンジントラックなどを製造しました。当サイトではエドワード期のギャレット社の4CD 蒸気トラクターのミニカーを紹介していますが、これはその約10年後の同じギャレット社の蒸気ワゴン(積載量約6tのボックストラック)です。蒸気エンジンはバルブなどが改良されてスムーズでパワフルになったそうです。
蒸気ワゴンの形式には、オーバータイプとアンダータイプの2タイプがありました。これはアンダータイプの蒸気ワゴンで、シャシー下に蒸気エンジンを配置し後輪をチェーン駆動していました。後輪にはゴムタイヤを使っていますが、空気が入っていないソリッドゴムタイヤでした。蒸気を発生させるボイラーがユニークな形状をした運転席内に配置されています。ボイラーが露出していないので、同時期のオーバータイプのフォーデン 蒸気ワゴンよりも自動車らしく見えます。ただ1930年代になるとより効率的で強力なディーゼル エンジンが使われるようになり蒸気トラックは姿を消していきました。
ミニカーは1985年に発売されたマッチボックス製のYシリーズです。荷台に表示された「CHUBB'S SAFE DEPOSIT」とは現存するイギリスの金庫メーカ「CHUBB」の貴重品保管庫という意味で、その会社のサービスカーをモデル化しているようです。これと同じボックストラックの実車画像は見つかりませんでしたが、同じモデルのダンプトラックの画像と見比べると、実車の雰囲気をうまく再現していると思います。また床下の蒸気エンジン/変速機やチェーン駆動の構造も結構リアルに再現されています。マッチボックスはバリエーションで平荷台トラックもモデル化していました。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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