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アトキンソン モデル D 蒸気ワゴン イギリス 1918年
蒸気ワゴンは蒸気エンジンで走行する荷物運搬用のトラックで、20世紀初頭に登場した最も初期のトラックでした。蒸気ワゴンは主にイギリスで使われ、イギリス以外の製造メーカーはほとんどなかったそうです。蒸気ワゴンの形式には、オーバータイプとアンダータイプの2タイプがありました。これは蒸気エンジンをシャーシの上に配置するか下に配置するかの違いです。オーバータイプは蒸気エンジンと横型蒸気ボイラーをシャーシの上に配置するので、蒸気機関車のような外観になりました。アンダータイプは縦型ボイラーの下に蒸気エンジンが配置されていました。
アトキンソン社は1907年創業の商用車メーカーで創業当時は蒸気ワゴンの製造メーカーで、1970年頃に同業の商用車メーカーに買収されました。この蒸気ワゴンはアンダータイプで、運転席の真ん中にあるのが蒸気を発生させる縦型ボイラーで煙突が付いています。その蒸気で動作する蒸気エンジンは床下に配置されています。トラックの積載量は4tぐらいで、ミニカーの箱に書かれた説明によれば蒸気エンジンは2気筒で出力は70HP(300rpm)、最大積載時の最高速は12mph(約20km/h)だったとのことです。なおトルクは十分だったので変速機はほとんど必要なかったそうですが、2段変速機が付いたモデルもあったそうです。
ミニカーは1985年に発売されたマッチボックス製のYシリーズです。アトキンソンの平ボディトラックを縮尺1/60でモデル化しています。荷台に表示された「BLUE CIRCLE PORTLAND CEMENT」とは実在したセメント会社です。運転席を巨大な縦型ボイラーが占拠していて、2気筒の蒸気エンジンはボディ床下中央にあり、そこから後輪(タイヤではなく鉄輪の付いたホイール)をチェーンで駆動する構造となっていました。運転席は冬は暖房?が効いたでしょうが、夏はさぞかし暑かったことでしょう。ミニカーは縦型ボイラーや床下の2気筒蒸気エンジンがリアルに再現されていて良く出来ています。Yシリーズにはバリエーションでアトキンソンの蒸気トラックが5種類ほどありました。蒸気ワゴン以外のアトキンソンの商用車はコーギーやオックスフォードがモデル化しています。 以下はフロント(室内)/リアの拡大画像と俯瞰/床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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クロスレイ デリバリー トラック ’BEER LORRY’ イギリス 1918年
イギリスのマンチェスターでクロスレイ兄弟が1867年に設立したクロスレイ ブラザーズ社はポンプや小型蒸気エンジンを製造していました。同社は1880年から内燃エンジンのライセンス製造を始め、1903年から自動車の生産を開始しました。1906年に車両製造部門としてクロスレイ自動車(CROSSLEY MOTOTS Ltd)が設立され、1910年から独立した会社になりました。1909年に登場した4気筒エンジンを搭載したクロスレイ 20HP(1912年から20/25HP)はイギリス軍の軍用車として採用され、ほとんどが軍用車(スタッフカー、軽トラック、救急車)として第1次大戦中に使われました。(民生用の乗用車もありましたが) 同社は第1次大戦後の1920年代にはバス製造に主軸を移しました。
第2次大戦中は再び軍用車製造に専念することになりました。第2次大戦後の1945年にバス製造を再開しましたが、バス以外の車両は製造しませんでした。同社は単独での存続が出来ないと判断し、1940年代後半に同業のバス製造メーカー AEC(Associated Equipment Company)による買収に同意しました。クロスレイの工場での生産は1958年に終了しました。なおクロスリー ブラザーズ社は大型エンジンを製造するプレミア ガス社を買収して1935年にクロスレイ プレミア エンジン社に改名するなどして、現在はロールスロイス パワー エンジニアリング グループの一員となっています。
ミニカーは1984年頃に発売されたマッチボックス製です。上述したクロスレイ 20/25HPのトラックをモデル化しています。マッチボックスのクラシックカーのミニカー Yシリーズ(YESTERYEAR SERIES 型番Y**)は、他のメーカーがモデル化していないユニークな車種を安価でモデル化していて、これもその1台でした。マッチボックス流のコストダウンでフロントグリル枠とヘッドライトを一体成型してあるなど細部が簡素化されていますが、実車の雰囲気はうまく再現されています。また運転席周りもそこそこ良く再現してあります。荷台に積んでいるのはドイツのビール レーベンブロイ(LOWENBRAU)の樽ですが、レーベンブロイのロゴ(獅子)が綺麗に印刷されています。マッチボックスは同じ型で数種類のバリエーションを発売しています。それ以外のクロスレイの量産ミニカーはコーギーの2階建てバス 1/76などがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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GM シボレー V8 アメリカ 1918年
イギリス系アメリカ人 デイヴィット ダンバー ビュイックがビュイック モーター社を1903年に設立しました。ビュイック社の業績は芳しくなく、馬車製造会社を経営するウイリアム C デュラントに援助を求めました。デュラントの采配でビュイック社は業績が回復しましたが、創業者のビュイックは会社を去りました。フォード社と売上げを競うほどに成長したビュイック社を土台にして、デュラントは1908年にGM(ジェネラル モータース)社を設立しました。GM社はキャディラック、オールズモービルなどを買収して拡大していきましたが、それが財務を悪化させデュラントは1910年に経営権を剥奪されました。
そこでデュラントは1911年にシボレー社を設立し、ビュイック社の技術者ルイ シボレーに低価格の大衆車を開発させました。この最初のシボレーは6気筒4.8Lエンジンを搭載していたのでクラシック シックスと呼ばれ、安価ながら高性能だったので人気車となりました。シボレーの成功でデュラントはGMの株式を買い戻し、1916年にGMの経営者として復帰し、その後シボレーはGMの1部門となりました。1915年にシボレーはフォード T型の対向車としてモデル 490(4気筒2.8Lエンジン)を発表し、名前どおりの490ドル(T型と同じ値段)で販売しました。この車はT型より装備が充実していたのでT型の牙城を脅かし始めました。(ただシボレーがフォードを生産台数で追い抜いたのは1930年代前半でした) 1918年にシボレーはV型8気筒エンジンを搭載するシリーズ Dを登場させましたが、この車は売れませんでした。デュラントはその後もデュラントモーターズを設立しましたが、成功しませんでした。
ミニカーは1969年頃に発売されたドイツのチィス(ZISS)製です。梱包箱に「CHEVROLET V8 1918」と表示されているので、上述したシリーズ Dをモデル化しているようです。ただ実車画像と見比べると、全体的な雰囲気が違っていて、フロントグリル形状が実車画像とはかなり違い、そこにあるはずのシボレーのエンブレムもありません。したがってモデル化された車種は良くわからないのですが、ドイツのチィスがモデル化しているので、欧州に輸出されたシボレーをモデル化しているものと考えます。実車諸元はシボレー シリーズ Dの仕様を記載しました。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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フォード TT型 バン BECKS アメリカ 1926年
フォード T型は商用車としても使われました。最初は安価な2座車の後部に荷台を取り付けた前述したランチ ワゴンのような改造車だったようです。2017年にT型をベースにしてメーカーが設計した商用車仕様のTT型が登場しました。TT型はホイールベースが60㎝ほど延長され、フレームと後輪駆動ギヤが強化されていました。当初はシャーシのみで販売され、ユーザーがバンやトラックや小型バスなどのボディをカスタムで架装していました。1924年にはフォードが架装したトラック ボディが設定されましたが、様々なボディの商用車があったようです。
フォード TT型は安価で丈夫でしたがエンジンや変速機はT型と同じでしたので、他社のトラックに比べると動力性能は劣っていました。最高速は標準で24km/hで、オプションのギヤボックスを付けても35km/hとかなり低速でした。(T型の最高速は70km/でしたが、駆動力を上げる為に後輪のデファレンシャルギヤ比が変更されていました) 1926年にはT型が約160万台生産され、TT型は約20万台生産されています。1928年にT型がA型にモデルチェンジし、TT型もAA型にモデルチェンジしました。
ミニカーは1993年に発売されたマッチボックス製です。ドイツのビール メーカー「Beck & Co」の配送用バンをモデル化しています。このフォード TT型はT型よりホイールベースが延長されていることがわかります。マッチボックスはこの類の商用車をたくさんモデル化していますが、それらの商用車のミニカーはカラフルなボディカラーと綺麗に印刷されたメーカーのロゴなどを楽しむものでもありました。このTT型もそこはきちんと押さえて作ってありますが、室内などもそこそこリアルに作ってあります。同じ型を使ったバリエーションがいくつかありました。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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