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メルセデス ジンプレックス 26/40HP ドイツ 1902年
前述したようにメルセデスという名前がつけられたレーシングカー 35HPが活躍したことで、ダイムラー社の車はメルセデスと呼ばれるようになりました。当時のチーフエンジニアのヴィルヘルム マイバッハはメルセデス 35HPの改良に着手し、1902年にメルセデス ジンプレックスと呼ばれた新型車が登場しました。ジンプレックス(SIMPLEX)とは英語のSIMPLE(簡潔)で、シフトチェンジのクラッチ操作を簡単にするなどして操作を簡素したことを意味する名前でした。ジンプレックスには4気筒4L(20HP)/5.3L(32HP)/6.8L(40HP)のエンジンを搭載する3モデルがありました。
6.8L(40HP)エンジン搭載のジンプレックス 26/40HPは当時の最上級車で、それ以前のメルセデス 35HPの後継車でした。全長約4.8mの大型車で、4段変速機を介して後輪をチェーン駆動し、最高速85km/hの性能でした。ジンプレックス シリーズは1910年まで生産され、途中で4気筒8L(50HP)と4気筒9.2L(60HP)エンジンが追加されました。なおこの時代の車名は課税馬力/実馬力を意味する表記で、例えば26/40HPとは課税上の馬力(排気量)が26HP(排気量262㏄程が1HPなので6800㏄に相当)で、実際の出力が40HPであることを意味します。(ただし課税馬力の定義や実馬力は変化しましたので、表記もそれに応じて変わっていきました)
ミニカーは1960年代に発売されたクラシックカーミニカーの老舗ブランドのリオ(RIO)製です。メルセデス ジンプレックスの最上級車である26/40HPをモデルしています。リオのミニカーは細部までリアルに再現されていて、当時のミニカーとしては別格の素晴らしい出来ばえでした。(値段もその分だけ別格でしたが) このジンプレックスもフロントグリル、灯火類などが実車に忠実に作りこまれていて、床下のフレーム構造やエンジン/変速機/サスペンションまで良く再現されています。リア フェンダーの前にある箱状の出っ張り部分は後輪駆動用チェーンのカバーで、床下部分をみるとチェーン駆動部が再現されてます。リオ以外のジンプレックスのミニカーはガマ、チィス(ZISS)、フランクリン ミントの1/24、イクソの2シータと60HP リムジンなどがあります。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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メルセデス ジンプレックス 60PS リムジン ドイツ 1903年
前述したジンプレックスは1903年に当時のダイムラー社の主任設計者であったヴィルヘルム マイバッハが設計した改良型60PSに変わりました。ジンプレックスでは一番大きな4気筒9.2L(60HP)エンジンが搭載され、名前の60PSは60HPの意味です。運転席も含めた密閉式のリムジンボディ(3列シート 6-7人乗り)を架装したこの車は、長距離旅行用に使われたようです。ルーフラックにはスペアタイヤ(丸いカバーを被せてある)やスーツケースが積載されています。この車はマイクロバス並みに人や荷物が積めることから、かなりの重量だったようで、後輪がダブルタイヤとなっています。
なおヴィルヘルム マイバッハは1909年にダイムラー社を退社して戦前の高級車メーカーであったマイバッハ社を設立しています。戦後マイバッハ社はダイムラー ベンツの傘下となり、現在はダイムラー ベンツの最上級ブランドとして存続しています。
ミニカーは2018年に発売されたイクソ プレミアムX製です。メルセデス ベンツ博物館に保管されている実車(参照画像)を忠実にモデル化しています。(ただしボディカラーは青に変えています) エッチング材で作られた精緻なルーフラックの枠、そこに積載したスーツケース、細い金モール(イクソ得意のメッキ調印刷で形成している)で飾られたボディ、そこそこ良く再現された室内などクラシックカーのミニカーとしてかなり良い出来ばえです。
同時代のメルセデス車ではエドワード期のメルセデス 37/65HP 1908をリオがモデル化しています。(参照→ リオの37/65HP) リオのメルセデス 37/65Hとこのイクソのジンプレックスを比較すると、イクソのエッチング材の枠や細かなメッキモールの出来ばえは最近の技術が採用されていて優れていますが、それ以外はあまり遜色がありません。逆にリオの床下部分の別パーツで再現したエンジン等のメカ部は、一体成型で塗装したイクソより優れています。約50年も昔に作られたリオのミニカーが素晴らしい物であったことが改めてわかります。 以下はフロントの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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メルセデス ジンプレックス クーペ デビル ドイツ 1905年
前述したようにメルセデス ジンプレックスには4気筒4L/5.3L/6.8L/9.2Lの4タイプのエンジンが搭載され、様々なボディ形式のモデルがあったようです。これもその1台で後席が密閉式になっているのでクーペ デビルという名前になっています。モデル化された実車が明確ではありませんが、よく似たボディの実車画像がありそれには28/32HPと記載されていたので、4気筒5.3L(32HP)エンジンを搭載したジンプレックスをモデルしていると思われます。。
この時代のメルセデス車は右ハンドルがほとんどですが、これは左ハンドルとなっています。初期の自動車は右ハンドルが多いのですが、これは馬車時代の名残りでした。一般的には右利きの人が多いことから、ムチを扱う馬車の御者は右側に座っていたそうです。その為馬車から発展した初期の自動車も右ハンドルがほとんどだったようです。なお欧州で左ハンドルが一般化したのは地域にもよりますが概ね1930年代以降で、アメリカでは大量生産されたフォード T型が左ハンドルだったので左ハンドルの一般化は欧州より早かったとのことです。
ミニカーは1960年代に発売されたチィス(ZISS)製です。チィスはドイツのMINI-AUTO社のブランドで、1/43サイズでドイツ車中心のクラシックカー、当時のオペルやベンツの乗用車、トラック 農機などのミニカーを製作していました。チィスで一番良く知られているのはクラシックカーのシリーズで、チィスのクラシックカーは金属パーツを使ったがっちりした作りが特徴でした。このジンプレックスはライトやランタンなどにプラスチック部品が使われており、細部まで良く仕上げられていて、チィスのなかでも高度な仕上げがされていました。ジンプレックスの特徴である後輪のチェーン駆動もちゃんと再現されています。 以下はフロントの拡大画像とチェーン駆動部の拡大画像です(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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メルセデス 37/65HP リムジン ドイツ 1908年
エドワード期のダイムラー社(DMG:Daimler-Motoren-Gesellschaft)が生産していたメルセデスの量産車にはベテラン期に登場した4気筒エンジンを搭載するジンプレックスとその上級車である6気筒エンジン搭載車がありました。この6気筒エンジンはチーフエンジニアのウィルヘルム マイバッハが設計したものでした。6気筒9.5L(65HP)を搭載する37/65HPと6気筒10.5L(75HP)を搭載する39/75HPがあり、当時のメルセデスの最上級車として1908年に登場しました。4段変速の後輪チェーン駆動で最高速90km/hの性能でした。フォーマルなリムジンや洒落たカブリオレなどが架装され、1911年まで生産されました。
なおウィルヘルム マイバッハは1906年にレーシングカー用にOHCを採用した高性能な6気筒12.9L(70HP)を開発していますが、このエンジンの使い方について上層部と対立し、前述した乗用車用6気筒エンジンを開発した後に会社を辞めています。マイバッハはその後1909年にマイバッハ社を設立しています。退社したマイバッハの後継者として他の会社に出向していた創業者ゴットリーブ ダイムラーの長男であるパウロ ダイムラーが呼び戻され、彼はメルセデス車のチェーンドライブをシャフトドライブに改良していきました。
ミニカーは1970年代に発売されたリオ製です。リアのカタログには単にメルセデス リムジンとされていますが、6気筒エンジン搭載の37/65HPをモデル化していると思われます。ベテラン期に紹介したリオ製のジンプレックスの型を流用して、37/65HPに仕立てています。ジンプレックスのフェンダーやボディを変更してあり、長距離旅行用のリムジーンという設定で屋根上とリアに荷物を満載しています。ミニカーの箱に添付されていた解説書にはメルセデスのリムジーンはこのような長距離旅行用として快適かつ安全にドライブできることでよく知られていたと書かれていました。床下部分にはシャーシ/サスペンション、エンジン/排気管が再現されていて、左右後輪をチェーン駆動している構造がよくわかります。 以下はフロント/リアの拡大画像と床下部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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ベンツ リムジン 20/35HP ドイツ 1910年
前述したメルセデス リムジンはダイムラー社の高級車でしたが、同時期にはベンツ社の高級車もありました。ダイムラー社とベンツ社が合併して「メルセデス ベンツ」ブランドが誕生したのは1926年でしたので、当時の両社はライバル関係にありました。1900年代当時のベンツは4気筒2Lエンジン搭載のの8/20HPから4気筒10Lエンジン搭載の39/100HPまで数種類のモデルがあり、それらは後輪駆動にドライブシャフトとデファレンシャルギヤを介するシャフトドライブ方式を採用していました。(従来のようなチェーンドライブ仕様もありましたが)
1909年に登場したベンツ 20/35HPは4気筒5.2L(35HP)エンジンを搭載した中型車で、4段変速機からシャフトドライブで後輪を駆動し最高速80km/hの性能でした。1910年にはエンジンが4.8Lとなりました。この車のようにベンツが後輪駆動にシャフトドライブを採用したのはライバルのメルセデスよりも早かったのですが、それ以外はメルセデス流の設計を真似ていたそうです。またベンツの6気筒エンジン搭載車は1914年の25/65HPが最初でしたが、これはメルセデスより6年ほど遅れていました。
ミニカーは1960年代に発売されたチィス(ZISS)製です。ミニカーの底板には「BENZ LIMOUSINE 1910」と表示されていますので、年式とボンネット形状から判断して上述した4気筒4.8Lエンジンを搭載していた20/35HPをモデル化しているようです。ツィスのミニカーの特徴はプラスチック部品の少ないがっしりとした作りで、これもシンプルな作りながら実車の雰囲気がうまく再現されています。屋根の上にある飾り枠はルーフラックで前述したメルセデス ジンプレックスと同じようなボディのリムジンですので、これも長距離旅行に使われたのだと思います。なおベテラン期で紹介した同じチィス製のメルセデス クーペでは後輪のチェーンが再現されていますが、このベンツはシャフトドライブですのでチェーンの表現はありません。なおフロントグリルにベンツの大きなロゴ(スリーポインテド スター)が付いていますが、これは実車には付いていなかったようですのでチィスの創作です。チィスの型番50で幌を開いたバリエーションもありました。 以下はフロント/リアの拡大画像と底板部分の画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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