ミニチュアカー ミュージアム

ミニカーの材質と経年変化

 

ミニカーの材質と経年変化 [1] [2]

主な材質(製造方法)の概要

 子供の玩具としてのミニカーも最近のコレクター向けのミニカーも基本的には工業製品で、量産して販売することを目的としています。したがって量産する場合には、その製品(量、精度、コスト)に応じて適切な製造方法が選択されます。(工芸品の類として一品製作される車の模型もありますが、このような模型は一般的なミニカーの定義からは外れます)

 

 初期のミニカーはダイキャスト製法で作られた物が多いですが、これは大量生産でコストダウンし大量に販売することを目的としていたからです。1960年代頃のミニカーの生産台数は1車種で数10万台から100万台程度でしたので、ダイキャスト製法が一番適していた訳です。この様な大量生産に使われるダイキャスト製法の金型は非常に精密で高価なので、生産台数が少ないと1台当たりの原価が高くなり販売価格が高くなってしまいます。(例えば金型に300万円がかかる場合、10万台生産すれば一台当たり30円で済みますが1千台しか生産しなければ一台当たりが3000円になってしまいます) そんなわけで大量に販売されないマニア向けの物は、高価な金型を必要としないホワイトメタルを材料とする鋳造製法などで作られていました。

 

 なお現在のミニカーではウインドスクリーンや室内の造形などにプラスチックのパーツがたくさん使われています。また精密なモデルでは金属の加工材やガラスなども使われていますので、単純に一つの素材からできているミニカーはありません。以下にミニカーのボディ本体の材質と製造方法についてその概要、長所、短所をまとめました。

材質(製法)
概要、製造方法、長所、短所
ブランド

ダイキャスト
(DIE-CAST)

diecast

概要
ダイキャスト材は大量生産するミニカーでは最も一般的な材質です。昔から使われてきた為、製作のノウハウが蓄積されていて一番安心できる材質です。
製造方法
非鉄合金を溶融し、精密な金型に高い圧力をかけて流し込み製品を作ります。使われる非鉄合金にはアルミ合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金、鉛合金、錫合金などがあります。ミニカーではかつては亜鉛合金が主として使われていましたが、現在はアルミ合金に移行しているようです。
長所
精度の高い製品を大量生産でき、低コスト化が可能です。
金属ですので機械的強度があり丈夫で、腐食さえしなければ長期保存による経年変化も少ないです。
適度な重量感があります。
短所
金型製作にコストがかかりますので、少量生産には向きません。プラスチックほどは細かい造形が出来ません。金属なので錆びたり腐食したりします。
ミニチャンプス、イクソなどの大手メーカー

ホワイトメタル
(WHITE METAL)
whitemetal

概要
ホワイトメタルとは鉛と錫の合金で白い色をしています。少量生産のミニカーで使用される材質です。ダイキャストと同様に比較的昔から使われてきた為、安心できる材質です。非常に重く重量感のあるミニカーとなります。
製造方法
シリコンゴムで作った型に、鉛と錫の合金を溶融して流し込み製品を作ります。
長所
コストのかかる精密な金型が必要有りません。材質が柔らかいので後加工が容易です。
短所
大量生産ができないので、コストが高くなります。あまり精密な鋳造が出来ません。
ブルックリン、ウエスタンモデルなど

アンチモニー
(ANTIMONY)

antimony

概要
アンチモニー(合金)とは鉛とアンチモンの合金で、日本独自の材料のようです。少量生産のミニカーで使用される材質です。国内では比較的昔から使われてきた為、安心できる材質です。非常に重く重量感のあるミニカーとなります。
製造方法
真鍮で作った金型に、溶融したアンチモニーを流し込み製品を作ります。
長所
ダイキャストより安いコストで金型が作れ、精密な鋳造が出来ます。材質が柔らかいので後加工が容易です。
短所
材料が特殊なことと大量生産ができないので、コストが高くなります。材質が柔らかいので、外部からの力で容易に変形します。
昔の大盛屋、初期ダイヤペット、アンチモニーコレクションなど

コールド キャスト
(COLD CAST)
coldcast

概要
コールド キャストとはポリストーンという樹脂を使う鋳造法のことです。少量生産のミニカーで使用される材質で、あまり一般的ではありません。
製造方法
化学反応で硬化するポリストーンという樹脂をゴムの型に流し込み製品を作ります。ポリストーンとは石粉をポリエチレン樹脂に混合した複合材料で、プラスチック成型に近い精度が可能で石に近い重さがあります。
硬化する際に発熱しないのでコールド(冷たい) キャストと呼ばれます。
長所
常温で成型できるので、コストのかかる金型が不要で手軽に製造できます。
短所
型の耐久性がないので大量生産できません。非常に固いので後加工が難しく、柔軟性がなく割れたり欠けたりしやすいです。製造個体差が大きく窓枠などが強度や精度的に作れないらしく、ボディ全体が一体成形の塊となっていて、ウィンドウはブラックアウト塗装処理されているものがほとんどです。(ミニカーというより置物に近い)

アオシマの80sコレクション・シリーズ、アドウイングのバスなど

レジン キャスト
(RESIN CAST)
resin

概要
レジン キャストとは合成樹脂(レジン)を使う鋳造法のことです。少量生産のミニカーで使用される材質です。ここ数年高価ながらも仕上げレベルの高い(最近の新興ブランドはそうではないが)ミニカーとして、レジン製のミニカーが増えています。
製造方法
硬化剤を混合すると硬化する熱硬化性樹脂を、シリコーンゴム型に流し込み製品を作ります。熱硬化性樹脂としてはポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが使われます。硬化するときに発熱するので、型には耐熱性のあるシリコーン ゴムが使われます。
長所
コストのかかる金型が不要で手軽に製造できます。コールド キャストとは異なり後加工が出来るので、仕上げレベルを高めることが出来ます。(コールド キャストと異なり室内等の造形も可能)
短所
型の耐久性がないので大量生産できません。レジンやシリコーンゴムが高価なのでコスト高になります。
細かいところまで仕上げるには手作業による仕上げ加工が必要になります。 (出来映えは作業者しだいです)
合成樹脂なので経年変化で変形する可能性があります。 軽いので重量感に欠けます。

スパーク、ビザール、アイドロンなど

プラスチック
(PLASTIC)
plastic

概要
コールドキャストやレジンキャストとは異なり、プラスチックをダイキャスト製法の金型で鋳造します。
昔は廉価版のミニカーでしたが、最近は1/87以下で出来の良い小スケール ミニカーとして定着しつつあります。
製造方法
熱可塑性樹脂をダイキャストと同じ金型に流し込み製品を作ります。熱可塑性樹脂としてはABS樹脂などが使われます。
長所
金属よりも精度の高い鋳造ができます。精度の高い製品を低コストで大量生産することが出来ます。
塗装しなくても色を付けることができます。
短所
金型製作にコストがかかりますので、少量生産には向きません。
合成樹脂なので経年変化で変形する可能性があります。
軽いので重量感に欠けます。塗装しない場合の表面の質感は安っぽくなります。
昔のノレブ、ファラー、ヘルパ、ヴィーキングなど
 

レジン製ミニカーとダイキャスト製ミニカーはどちらが精密か?

 最近このような質問をWEB上のQ&Aサイトで良く見かけます。この質問とその解答のほとんどが要領を得ていないと考えるので、当サイト流の見解を示します。

 まず最初に言っておきたいのが、精密なミニカーと良くできたミニカーは別物だということです。精密なミニカーとは細かな構成部品を実車同様に組み合わせて作られているミニカーのことで、究極的に精密なミニカーの代表例はCMCやEXOTOの超精密モデル(ダイキャスト製)です。そもそもエンジンやシャーシなどのメカ部分を再現していないミニカーを、精密なミニカーと表現することはおかしいです。それならばほとんどのミニカーが精密なミニカーになってしまいます。(オートアートの1/18などのようにメカ部分を再現しているミニカーを精密なミニカーと呼ぶのです) 精密なミニカーでも全体的に出来の悪いミニカーもありますので、「精密=出来が良い」ではありません。したがってどちらが精密かということではなく、どちらが出来の良いミニカーかということで考えます。

 

 次に指摘したいのは、ミニカーの出来ばえは材質で決まる訳ではないので、この質問自体がおかしいことです。どのくらいのコストでどのようなユーザー向けのミニカーをつくるのかに応じて、最適な材質が選択されるのであって、材質とミニカーの出来ばえは別物です。それではミニカーの出来ばえは何できまるのかというとそれは基本的にミニカーの型をつくる型職人の技術(センス)とそれを製品化する工場の技術レベルで決まります。型職人の技術の良し悪しはおおざっぱにいうと経験がものをいうので、ベテランの型職人がいる老舗ブランドのミニカーのほうが一般的には出来が良いと考えられます。ただしベテランの型職人も得手不得手があるので、いつも出来が良いとはかぎりませんが。。。

 

 またレジン製は後加工ができるのでよりリアルな再現ができるというのもおかしな話で、ダイキャスト製でもホワイトメタル製でもアンチモニー製でもやる気になれば後加工できます。コストがかかる手作業での後加工(というより手直しに近い)を行えば、リアルな再現ができるというのはあたりまえの話で、これは材質的に多少やりやすいとはいえレジン製に限った話ではありません。レジン製に限った話をするなら、少量生産のレジン製ミニカーで型を省略したことで起こるウインドスクリーンの問題を取り上げるべきでしょう。通常3次元的な形状を型で形成しているウインドスクリーンを、レジン製ミニカー(1/43サイズ)では平板な透明プラ材を使っていることが多いです。これがレジン製ミニカーに多いウインドスクリーンがはがれる不具合や、キャビン部分が平板な感じにみえる問題を起こしています。(屋根がないF1のミニカーではこれが問題にならないので、レジン製が多いのです。屋根がある乗用車ではかならず平板な感じがしますので、ウインドスクリーンだけは真空成型用の簡易型を使っている場合があります)

 

  最近の新興ブランド(レジン製)でも出来が良いのがありますが、これには理由があります。それらのほとんどは人気の高い車種(ポルシェやスカイラインなど)で、これらの車種には出来の良いダイキャスト製ミニカーが既にあって、パクリとは言いませんが、お手本にして型をつくっていることはほぼ間違いないでしょう。実際に新興ブランドが独自に型をおこしたと思われるモデルは基本的なプロポーションが良くないものが見受けられ、オーバーフェンダーやシャコタン仕様にしているのはその辺をごまかしているのです。

 

 という訳で、出来の良いミニカーを集めたいなら、自分の目で実物をみて選びなさいというのが結論です。ただこの手の質問をする人は、まだその見極めができないからこんな質問をしているのでしょう。私のミニカーコレクターとしての経験と私と同じコレクター仲間のコレクションを見てきた経験からアドバイスしますと、コレクションを本当に続けていきたいのなら、レジン製ミニカーをコレクションの主流にするのはおやめなさいと言っておきます。

 

 ついでにもう一言 Q&Aサイトの回答ではいまにもダイキャスト製ミニカーがなくなるようなことを述べている方がいましたが、圧倒的な数を販売しているトミカがダイキャスト製であることをお忘れのようです。.将来的にもミニカーの主流はダイキャスト製です。F1のミニカーなど特定の分野ではレジン製が主流になりつつありますが、ミニカー全体で考えればダイキャスト製ミニカーが主流から外れることなどないでしょう。

 

 

ミニカーの経年変化の実例と保存方法(手入れ方法)

 人が作った物は長い年月を経ることで必ず朽ち果てていきます。玩具としての昔のミニカーはもちろん最近のコレクター向けミニカーでも、設計/製造時点で長期保存することはほとんど考慮されていないと思われます。したがってミニカーを長期間保存していると、色々な問題が発生します。ここでは個人的に経験したミニカーの経年変化の実例とその対処方法についてまとめてみました。(あまり見せたくない物も有るのですが、百聞は一見にしかずです)

 

1.保管環境について

 一般的な話として物を保管するには冷暗所が良いと言われますが、ミニカーも同様です。理想的には空調を完備した地下室が最適です。地下室の場合一番問題となる直射日光(紫外線)が当たりませんし、温度/湿度の変化が少ないからです。(美術品の保管は温度18℃程度、湿度55%程度が良いらしいです) 実際に世界的に著名であったミニカーコレクターの華麗なコレクションルーム(地下室)を拝見したことがあります。ただそのような理想的な保管環境で保管しても、ミニカーには色々な経年変化が発生します。私の場合理想的な環境とはほど遠い状況ですが、たいていの方は私とそう変わらない環境であると思います。

 

 当方の保管環境を簡単に紹介します。私の部屋は4mX2.5mほどの大きさで、2階にあります。エアコンがありますが、私はどちらかというとあまり使いません。ただし直射日光を防ぐために窓は雨戸を閉め切ったままです。ベランダに出るガラス引き戸もあるのですが、これも半分は締め切ったままで、残り半分はカーテンを引いています。そんなわけで部屋は薄暗いので日中も照明を付けています。

 

 壁の一面には約35年間使っている造り付けの棚があり、昔購入したミニカーのほとんどは箱から出してそこに並べてあります。最近購入した全面ガラスのシューケースも2本有り、そちらにも昔のミニカーが並べてあります。これらのケースは既に満杯なので、新しく購入したミニカーは箱のままでタンボール等に区分けして別の部屋に保管しています。そんなわけで直射日光には気をつけていますが、特別な保管をしている訳ではありません。

部屋の概要

my room

2.タイヤとホイールの問題

 ミニカーの経年変化で一番多いのが、タイヤとホイールです。大別するとタイヤの変形や切れ、ホイールの変形(溶け)や錆びなどがあります。

2-1 タイヤの変形
まずタイヤの変形です。最初に紹介するのはタイヤに白いゴム(天然ゴム系)を使用している1960年代頃に製作された非常に古いミニカーです。この種類のタイヤは長期間の並べておくと自重でタイヤが変形し、経年変化でゴムが固くなり元に戻らなくなります。画像は1961年に発売されたディンキーのシボレー コルベアですが、白いタイヤが変形しています。長期間同じ状態で保存されていたことで、タイヤがミニカーの自重で上下方向に押しつぶされています。天然ゴムで出来た白い消しゴムが古くなると固くなりますが、それと同じ現象です。

 なおこの問題は古いミニカーの話ですから、現存する当時物は既に全てのタイヤが弾性を失って固くなっています。従ってこの問題に現時点での対処方法はなく、最近販売されているレプリカ品のタイヤに交換することぐらいしか出来ません。(ただタイヤだけ新品にしても、ボディのやつれ具合とミスマッチしますが)

gm corvair dinky
タイヤの変形例 1 ディンキー コルベア 
(マウスカーソルを画像に載せると拡大されます)
 

 同時代のミニカーでも保管状態が良ければ、タイヤが変形していない物もあります。画像は1960年に発売されたディンキーのルノー フロリードで、こちらはタイヤ自体は固くなっていますがほとんど変形していません。これはタイヤに負荷がかからない状態で保管されたことを示しています。タイヤに負荷を掛けない方法として実車の動態保存ではボディをジャッキアップします。

 ミニカーの場合は色々な方法があります。ボディ全体を緩衝材でくるんで、箱に入れておけばタイヤに自重がかかりません。またケースに並べておくときはボディに何らかの馬をかませて、ボディを浮かせます。私の場合は画像のようにウレタンフォーム(スポンジ)を適当な大きさに切断して、ボディの下に敷いています。簡単な方法ですが結構効果的です。ただしウレタンフォームとプラスチックが溶着する場合があるの、でプラスチック部材には接触させないようにします。

renault dinky
タイヤの変形例 2 ディンキー ルノー フロリード
(マウスカーソルを画像に載せると画像が変わります)
 

 1960年代にタイヤの材質は天然ゴム系から合成ゴム系の黒いタイヤに変わりましたが、天然ゴム系と同じような問題が起こります。合成ゴム系のタイヤも、経年変化でゴムが固くなります。従って上記と同様にタイヤに負荷がかかった状態で保管するとやはり変形します。

 画像は1967年に発売されたコーギーのランチア フルビアで、遠目では分かりにくいですが良く見るとタイヤの接地面が変形しています。10年間近くも同じ状態で並べていたので、タイヤの接地面が平らになりフラットスポットが出来ています。タイヤの弾性が失われているので、この変形は元に戻りません。この現象は同時期のコーギーやディンキーで、自重が重くタイヤが細い物に発生します。予防方法としては時々タイヤを動かしてやること、もしくは可能性が高いミニカーはタイヤを浮かせるようにします。(なお発生してしまった物も、症状を悪化させないようタイヤを浮かせます)

lancia corgi
タイヤの変形例 3 コーギー ランチア フルビア
(マウスカーソルを画像に載せると拡大されます)
 
 最近のミニカーでも箱から出して長期間並べておく場合は、この問題が発生する可能性があります。特にアンチモニー製などずっしりと重いミニカーは確実にこの問題が起こりますので、注意してください。(ただし最近のミニカーは箱から出して並べていないので、個人的にこの実例はありません)
 

2-2 タイヤの切れ
上記と同じ経年変化によるゴムの劣化でタイヤが切れることもあります。これは画像のようなクラシックカーのタイヤのようにタイヤの高さ方向の幅が薄い物に発生します。最初にタイヤがホイールに組付けられた時点では、タイヤが伸びてホイールと一体化しています。その後タイヤが劣化して弾性が無くなると、ゴムが引っ張り力に負けて切れてしまいます。

この問題は主としてこのような形状のタイヤに発生することがほとんどで、ブランドで言うとMINIALUXE(ミニオール)に多く発生します。ひどい場合は全てのタイヤが切れるという悲惨な物もあります。ただ通常の厚みがあるタイヤでも、オートピレンなどで同じような切れが発生したことがあります。ゴムの劣化はどうしようもないので、これも防ぐ方法がありません。(タイヤを外しておくというわけにはいかないので) なおゴムの劣化を防ぐ潤滑剤という物があり、劣化を遅らせるぐらいは出来るようです。

minialuxw tire
タイヤの切れ例 ミニオール パナール  
(マウスカーソルを画像に載せると拡大されます)

2-3 ホイールの溶解
  次はホイールが溶けるというミニカーの歴史上最大の問題で、ホイールが金属製からプラスチック製に切り替わっていった1970年代に起こりました。当時のミニカーのホイールには大別して2つのタイプがありました。一つはマテルのホットホイールの大ヒットに影響されたスピードホイールという走行性を重視した見栄えの悪い物です。このスピードホイールはタイヤ部分も含めて全体が樹脂の一体物となっていました。もう一つはコストの高い金属性のホイールの代わりに樹脂製のホイールを使い、合成ゴムのタイヤを組み付けたリアリティ重視の物でした。

 

 問題はこのリアリティ重視のホイールで起こりました。合成ゴムのタイヤには柔軟性や耐候性を改善する可塑剤という薬品(有機溶剤)が含まれています。この可塑剤はプラスチック(ABS樹脂等)を溶かす性質があります。ゴムがホイールを溶かすのには数ヶ月単位という時間が必要なので、新品のミニカーでは問題が発生せず、購入後かなり経ってから問題が起こるというやっかいな物でした。(プラスチック消しゴムがプラスチック製筆箱を溶かす現象と同じ) この問題は樹脂の種類によって程度の差はありましたが、スピードホイールを採用しなかったほとんど全てのメーカーで起こりました。特にひどかったのはサブロン、ドゥグー、ソリド(特定の期間)などでした。

 

 代表的な症例として、サブロンのポルシェを紹介します。サブロン(ベルギー)は1970年頃にダイヤペットが代理店として輸入したブランドです。このブランドのミニカーは20種類ほどありますが、その全てでこの現象が発生します。症状としてはタイヤがホイールを溶かして、一体化してしまうという物です。これはどのような保管状態でも発生し、材質的な問題ですから防ぐ方法はありません。

 サブロンの場合比較的安価なミニカーですし、防ぎようもないのであきらめるしかありませんでした。100%確実に発生しましたのでこの問題を広く認識させるきっかけになったという点では、ある意味で有意義なミニカーでした。

porsche sablon

ホイールの溶解例 1 サブロン ポルシェ 911 
 (マウスカーソルを画像に載せると拡大されます)
 

 個人的にショックが大きかったのは、当時としては非常に精密で高価なミニカーであったドゥグーにもこの問題が発生していることを見つけたときでした。それは今から35年ほど前でしたが、精密な出来映えのホイールのほとんどにこの症状が出ていました。症状をそれ以上悪化させないよう、とりあえずホイールからタイヤを外して対処しました。ホイールとタイヤが完全にやられたミニカーは、形状の似たホイールを持つ他のミニカーから部品取りして交換することにしました。

 

 ドゥグーの場合箱に入れて保管していると、症状の進行が遅い場合もあります。以下左の画像のフィアット F2は箱に入っていた状態では問題が無かったのですが、箱から出して飾ったおいたところ、約1年ほどでこの状態になってしましました。(加重がかかるタイヤ下部から溶解しています 多分箱のなかではタイヤに加重がかからないので、溶剤があまり染み出ないようです?)  この問題はタイヤかホイールの材質を変えることで対処できるようです。右の画像は製造時期が新しい物で、この個体には問題は発生していません。見た目は同じですが、明らかに何らかの処置が行われたと考えられます。

dugu fiatf2 trouble      dugu fiatf2 fix
ホイールの溶解例 2 
ドゥグー フィアット F2
ホイールの溶解例 2 
ドゥグー フィアット F2 対策後
   

 以下の画像はソリドのルノー14の例で、1977年に購入した物です。1975-78年頃に新規設計で生産されたソリドのミニカーにはこの問題が多く発生します。これに気づいたソリドは材質変更にて対策を行ったようで、1980年頃には問題は起こらなくなりました。右の画像は1980年に購入したルノー14ですが、問題は起こっていません。(個人的見解で根拠はありませんが、ホイールの材質が変更されているように思います)

solido renault14 trouble      solido renault14 fix
ホイールの溶解例 3
ソリド ルノー14
ホイールの溶解例 3 
ソリド ルノー14 対策後
   

 この問題でミニカーコレクターが被った損失は多大なものでした。今なら製品の回収/交換などが行われてもおかしくないような問題でしたが、当時は単なる子供のおもちゃの問題ということでコレクターが泣き寝入りするだけでした。(ミニカーメーカーに多少のクレームがあったとは思いますが)

 

 この問題を経験して学習したメーカーは同じ問題を起こさなくなりましたが、この問題を知らない最近の新興メーカーが似たような問題を起こしています。右の画像はミニチャンプスのボルボですが、台座に取り付けたままで長期間保存していたことで、タイヤと台座が溶着しています。この問題の原因も、タイヤに含まれる可塑剤による物です。ただこの問題は台座が溶けるだけで、ミニカーの側には問題が生じないのであまり深刻な問題ではありません。

 

  この台座が溶ける問題はミニチャンプスに限らず多くのブランドで発生しています。対策としてはタイヤと台座が接触しないようにすることです。このほかにもホイールに施した塗装の有機溶剤でホイールが溶けるなど、有機溶剤が樹脂を溶かす問題は未だにたくさん発生しています。(この様に樹脂素材には問題が多いので、私はレジン製ミニカーが増えることを好ましく思いません)

volvo pma trouble
台座の溶解例 ミニチャンプス ボルボ
(マウスカーソルを画像に載せるとミニカーが外れます)
   

2-4 ホイールの錆び
 樹脂製ホイール以前に使われていた金属製ホイールにも問題が起こります。ホイールは塗装していない場合が多いので、保管環境が悪いと錆が発生します。コーギーやディンキーに多い車軸が貫通したディスクホイールはアルミ素材のようであまり錆びないようですが、ダイキャスト素材のホイールは錆びる可能性が高いです。

特にポリトーイのMシリーズや初期のソリドのような凝ったホイールは気をつける必要があります。画像はポリトーイのMシリーズのポルシェ 912ですが、ホイール中央部分が完全に錆びて変色しています。この錆の最大の原因は何だとおもいますか? 実はそれはコレクター自身です。ミニカーを触る際に指の汗に含まれる塩分が付着したことが原因です。それにさえ気をつけて乾燥した環境に保存しておけば、あまり錆びを心配することはありません。市販の錆止め剤等の薬品は樹脂部材に問題がある可能性が高いので止めた方がいいでしょう。

politoy porsche
ホイールの錆び例 ポリトーイ ポルシェ
(マウスカーソルを画像に載せると拡大されます)
   

2-5 ホイールの割れ
ダイヤペットの初期のミニカーにはホイールが割れるという問題が起こります。画像は白い樹脂ホイールにメッキしたホイールキャップを被せてあるタイプのホイールで、白の樹脂ホイールにひびが生じて割れています。またこれよりも古い物では、ホイールキャップ部分に金属が使われていますが、その場合はホイールの溶解と割れが同時進行している場合もあります。

 

 これも基本的にはこれまでに紹介したホイールの溶解と同じ現象で、タイヤから出る溶剤のせいでホイールの樹脂が劣化し、車軸にかかる荷重でホイールが割れているのだと思います。したがって、ボディを浮かせてタイヤに加重を掛けないようにすればホイールの割れはある程度防止できると思われます。(ただしホイールの劣化(溶解)は少しづつ進行していきます、これは止められません)

diapet corolla
ホイールの割れ例 ダイヤペット カローラ
(マウスカーソルを画像に載せると拡大されます)
 
以下 ミニカーの材質2に続く